耳より住宅マネー講座
第25回
監修・執筆: ファイナンシャル・プランナー(認定者)
島田昌夫

●二世帯住宅と「小規模宅地の特例」(2)
このコラムは、住宅ローンや税金に関する私の相談事例をもとに、毎月耳よりな情報をお届けしていきます。(1)上手な住宅資金づくり (2)効率的なコストカット方法 (3)税制関連の最新情報 といった切り口で適宜ご紹介していく予定です。皆様の家づくりにお役立ていただければ幸いです。

Q
二世帯住宅を父所有の土地に建てました。その一方、父はアパートの土地も所有しています。いざ相続となった場合、このように用途の異なる宅地に対して「小規模宅地等の特例」の評価減をどのように使うことになるのでしょうか。(会社員・36歳)

A
今回の「小規模宅地等の特例」は「用途の異なる宅地」への適用の仕方がポイントですが、まず全体の流れから確認しておきましょう。

相続税算出のフロー(下図A)


下の図Aは、相続税算出の流れを示しています。ご覧のとおり、不動産の評価減を行うのはかなり前段階であることにご注目ください。また、ご相談例のようなアパートの土地については1貸家建付地として評価減を行い、次に2「小規模宅地等の特例」という順で計二回の評価減を行うのが一般的です。ここではアパートの宅地については前述の貸家建付地としての評価減後の評価額15万円/m2(200m2)、二世帯住宅の宅地は相続税評価額20万円/m2(180m2)、合計380m2と仮定します。ここから今回のポイントをご説明します。

「用途の異なる宅地」の有利選択(下図B)


バックナンバー第24回「小規模宅地の特例と二世帯住宅(1)」の図表Aをご参照ください。このように一定の要件さえ整えば、特定居住用宅地等は240m2(80%減額)、特定事業用宅地等は400m2(80%減額)、不動産貸付用宅地等は200m2(50%減額)が認められます。したがって、ご相談者の二世帯住宅の宅地が特定居住用宅地等に、アパートの宅地が不動産貸付用宅地に該当するなら、「二つの土地の合計180m2+200m2=380m2がまるまる評価減されるだろう」と考えがちです。が、それは正しくありません。

(1)1m2あたりの換算後評価額を計算し、高い方の宅地から選択する。


「小規模宅地等の特例」については合計面積が400m2と決められています。しかも、宅地の用途ごとに減額対象面積が240m2、400m2、200m2と異なります。したがって、単純な合計400m2まで適用が認められているわけではないのです。そこで、換算割合という一種のハンディキャップを織り込む必要があります。この換算割合は、ご相談者の場合、200m2を分母にしてアパートの方は200/200、二世帯住宅の方は240/200となります。 
【二世帯住宅を建てた宅地の換算後評価額】
=1m2当たりの評価額×80%(特定居住用宅地等としての減額割合)×240/200(換算割合)
=20万円×80%×6/5
=192,000円
【アパートの宅地の換算後評価額】
=1m2当たりの評価額×50%(不動産貸付用宅地等としての減額割合)×200/200(換算割合)
=15万円×50%×1
=75,000円
両者を比較すると、192,000円>75,000円……(あ)
この結果、二世帯住宅のある宅地の方が高いことがわかります。したがって、二世帯住宅のある宅地から優先して減額特例の適用を受ける方が、減額される金額を大きくできる分、有利になります。

(2)もうひとつの適用可能限度面積を計算する。


二世帯住宅の宅地については減額対象面積240m2のうちまだ180m2しか使っていません。60m2(=240m2−180m2)余っている状態です。とは言っても、「残りの60m2分がそのままもうひとつのアパート宅地、すなわち不動産貸付用宅地の減額対象面積にあてることができる」と考えてはいけないのです。ここでも宅地の換算割合を考慮する必要があります。その際は下記の式に

A+B×5/3+C×2≦400m2(国税庁HPより)
A:特定事業用宅地等の適用面積 B:特定居住用宅地等の適用面積C:その他の小規模宅地等の適用面積

あてはめます。ご相談例では、特定事業用宅地はないのでAには0を、Bには既決の180m2をおきます。アパートのある宅地がCとして未知数になります。
0+180m2×5/3+C×2≦400m2
これを解くとC≦50m2……(い)
ここからアパートの方の宅地については50m2を限度として評価減の恩恵を受けられることがわかります。有利選択をしても一方の減額対象面積を上限まで使っていない場合には、用途の異なる宅地の一部を減額対象にできるのです。

(3)結論


以上、(あ)の結果から二世帯住宅の宅地180m2中180m2分を優先して選択し、(い)の結果からアパートの宅地200m2中50m2分を選択。合計230m2分について評価減の恩恵を受けられます。また、「小規模宅地等の特例」の適用を受けられるのは、両方の土地の単純な合計380m2ではなくこの230m2です。
用途の異なる宅地を相続する場合には、宅地を有利選択できる。この知識は相続以前に頭の中におさめておきましょう。
point25 「小規模宅地等の特例」の適用につき、用途の異なる宅地が複数ある場合には、有利選択できる。


 
相続税算出のフローにおける「不動産評価減」二つの方策



※本コラムの内容は、2005年3月現在のものです。本掲載記事を許可なく転載することを固くお断り致します。
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