家族を育てる家

イノスの家の工務店

「Mogaハウス=女性らしい感性から提案する上質な暮らしかた」 ~㈲高下組 高下オーナーインタビュー~

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有限会社 高下組は鳥取県米子市にある地域密着型の建築会社で、イノスグループ発足時からのグループ会員建設会社です。

「Mogaハウス」ブランドにて、新築からリフォーム、パン教室、ステンドグラス教室、カフェや雑貨販売まで幅広い住生活提案事業を展開されています。

今回はMogaハウスの高下純子オーナーにお話を伺いました。

「高下組」はどんな会社ですか?

私は嫁としてここに来たので創業当初の事は分かりませんが、高下組は今年で55期を迎えました。
約半世紀の歴史をもった会社です。
もちろん50年前の工務店と今の工務店とは全く異なるように、高下組もいくつもの変遷をたどって現在に至ります。これに関して少しお話しましょう。

創業当初の昭和30年代はちょうど高度成長期。
先代の社長の時代ですが、日本中が住宅ブームで湧き上がり、高下組でも年間約100棟を手掛けていました。
それを建ててくれる住み込み大工さんも30人ほども抱えていたそうです。
しかしながら先代は経営には疎く、会社として財を築く事は出来ませんでした。
また、当時の住宅はとにかく建てるのが先決で、性能面ではあまり良くありませんでした。恥ずかしながら、雨漏りもしょっちゅうしていたようです。

そんな中、次に経営を任された専務(先代社長の弟)は先代社長と意見が合わず、会社が二分されてしまったのが昭和50年代です。
社内が専務派と社長派とに分かれた事から、先代の息子である現社長と次男とが呼びもどされました。彼らはその時、すでに独立していたのですが、会社に戻って見習いから始めたそうです。

ところが、戻ってきてみれば、会社が出した「請け判(注)」が焦げ付いてしまった事で、高下組は莫大な借金を抱えた状態でした。
私が嫁いだのも、ちょうどそんな時期でした。

当時はこの借金がどれほど大変なものかも分からず、ただただ建築が好きで自分の趣味が活かせると思って嫁いできたのです。ちなみに私はいまだに建設系の資格を持っていません。今、やっていることは、全て独学から立ち上げたものです。

思い出せば、学生の頃から住宅雑誌を読み漁って、その頃から住友林業にもあこがれていました。
住生活に関する新しい考え方が好きだったのです。
しかし、そんな私の家づくりの考え方は、昔のやり方がまかり通る時代にはなかなか通じませんでした。
でも夫である現社長と共に、何とか会社を立て直さなきゃいけないと、必死に仕事をしてきたのがその頃でした。

そして5年か10年くらい経った頃、イノスグループが発足したことを聞きました。
もともと住友林業が好きだった私にとって、地方にいながらその一員になれるなら何てラッキーなのかと思い、即入会。そこから高下組の家づくりが変わってきました。

(注):請け人が保証のために押す判。また、保証人となってその判を押すこと。

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具体的に何が変わってきたのでしょうか?

嫁いでからすぐに思ったのですが、家づくりに関する昔ながらの「職人さん主導の現場」が、私目線で見るとこれはおかしいと気づいた事が結構ありました。
例えば、あまりにも間取りが規格にとらわれてしまっていること。

家の間取りの単位は今でも「間」が使われていますが、一間は約1.8m。
その半分でも91cm。
この単位で家を造っていったら、確かに「間伸び」したものが出来てしまいます。

奥行きのありすぎる収納や無駄に広いキッチン作業スペースなど、使い勝手を無視した提案が当時の家には本当に沢山ありました。

家は広ければ良いというものではないと思います。
主婦が働くキッチンでさえも「これだけ広いから良い」とか「沢山ものが入るから良い」という、「家事をしない人」の考え方が主流でした。
反面、私はそれよりも「動線」の大切さを考えていました。
なので、見掛けは豪華だけど使いづらい、昔ながらのやり方に不満がありました。
間取りについても、職人さんが言われるような「間取りも広ければ広いほど良い」という考え方ではなく、使い勝手を考えて、むしろちょっと縮めるようにする事も多くありました。

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また、暮らしというものは「収納」などの機能面ももちろん大切ですが、「楽しみ」という側面も重要と思います。もっと家を「飾る」という事に意識を向けても良いのではないかと思い、私は家の中にそういうコーナーを提案して来ました。
飾ることによって生活が楽しくなるようなコーナーも大切だと思います。

ちなみに昔は、キッチンは家の奥の北側に配置され、しかもキッチンだけがそこにある事が多かったですよね。
そんな中で家族構成の変化やライフスタイルが次第に変わってきて、時代はキッチンにリビングとダイニングをセットにしたLDKという考え方が主流になって来ました。
しかし、この流れの中でも、私は当時からキッチンが家の中心と考えていました。

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今でこそキッチンが中心の家づくりが雑誌などではよく紹介されていますが、当時はまだ客間のある家が中心でした。

思い出してみれば、当時のキッチンは「収納力」「豪華さ」「キレイさ」を重視されて作られていました。
でも私はいかに「使いやすく」、「動線がよく」、「コンパクト」に使えるかを重視してきました。
主婦の目線から考えればショールームのシステムキッチンと現実のキッチンは違うと思っていました。
そんなニーズを満たす既成のキッチンが無かった当時は、結局のところ自分で作るしかなく、苦労して理想のキッチンを作っていました。写真にあるものもその中のひとつです。

現在では、大型収納のパントリーがあるより、不要なものは持たずにシンプルに良い物を大切に使うという生活スタイルに変わってきましたよね。
私もその点は主婦として女性として共感しています。

一昔前、建築屋の奥さんは、経理を担当している方が多かったと思いますが、家づくりの提案まではなかなか口を出せませんでした。
しかし、私はそれが好きでしたのでどんどん提言してきました。
そしてお客様のお家に伺うのも主人と一緒に行き、私自身が間取りの提案をし、女性目線という言葉をお客様の方から言って頂く様になりました。

ここまでに多くのご苦労があったかと思いますが?

先代は、女性がどうこう言っても全く聞く耳を持たない人でした。
例えば、「事務所のレイアウトをこう変えましょう」という私の意見に対しては、全部ダメ出しをするばかり。
私は会社を変えなかったらもっとダメになると思っていたので、「それならばここだけは変えましょう。」と少しずつ風穴を開けてきて、会社を少しずつ変えていきました。
そのため30年もかかってしまいましたが、それをずっと積み重ねてきた結果、やっとここまでになりました。

既存の考え方を変えようとしない人達の中、今を変えていこうということはものすごく大変でしたが、どれだけ反対されても諦めませんでしたし、時にはひどい言葉を浴びた事もありました。
しかし、「子どもたちと一緒に会社をやりたい」、「彼らの帰ってくる場所を作りたい」という思いで、必死にやってきました。

主人は私のそんな思いを、先代に一つ一つ掛け合ってくれました。今となっては、主人からは「これまで全部お前の思い通りになってきたな」と言われています。
多分今まで同じ環境にいる人達には気が付かなくても、他環境から入ってきた私にはおかしい、変えなきゃ、と気づくことが多かったし、このままではダメになるという恐怖感が誰よりも強かったと思います。

一方、私は建築士の資格は無いので、平面的な間取りは出来ても構造的な事には不安があり、そこは建築士の主人がしっかりフォローしてくれて、私の思いを形にしてくれています。

御社が手掛ける「パン教室」は、生徒さんも多く評判ですね

昔ながらの工務店さんは、家を作る事だけが仕事だったと思います。
私は家づくりに関わりだした頃から、「家は家族を包み込む器」だと思っています。
その家が「器」であるならばいつも家族の為にあって、常に磨いていかなければいけないと思っています。
つまり、家は建てて終わりではなく、家族の成長と共に変わっていって良いものだと思うのです。

だから、お施主様には家を建てたら放っておくのではなく、いつも家を見ていて欲しいとお話ししています。
家という「器」の色付けをしていくのは、そこに住まわれるご家族です。
私たちは、陰ながらそのお手伝いしていくのが仕事です。
そこには補修はもちろん、間取りの変化などへの対応もありますが、もっと色んな意味での住まいへのご提案が出来ないかなとかねがね思っていて、その中のひとつが、「パン作り」です。

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どうして住まいへの提案のひとつがパン作りなのかと、疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。
家で毎日料理をするのは当たり前ですが、私はお茶を楽しむ時間を大事にしています。
お茶と言っても、私は紅茶やコーヒーが好きなので、それを思い浮かべてください。

お茶の時間を楽しんでいない家族って、きっと家族の対話が少ないでしょう。
だから子どもたちがなかなか家に戻って来ないのではないでしょうか。
お母さんたちは女友達とはよくカフェに行きますが、自分の家に招待してお茶を出す人は少ないですよね。
でも本当は家族でのお茶の時間ってとっても大切だと思っています。
なのに、せっかく新しい家を手に入れても、キッチンをそんな役割として使いこなせている方がどれだけいらっしゃるでしょうか?

私が嫁いだ時、私はお茶が好きだったので、自宅に私が設計したキッチンをリフォームしました。
そしてその頃から、来られた方々に「高下さんのお家ってカフェみたい」って言われたのです。
30年ほど前のことです。

その言葉が私には驚きで、他の方達のキッチンはそうじゃないんだ!!ってことを知りました。
私は当時は外でお茶をする事はほとんどなく、代わりに、その頃からどんどん自宅に友達を呼んでいました。
カフェに行くよりも、自分の家のほうがもっと素敵だと思っていましたから。

我が家では家族でお茶をすることによって会話が広がっていたので、他の人から見たらすごく仲が良い風に見えるみたいでした。家族がお茶を楽しむことの出来るキッチン。
キッチンがもっともっと家族の居場所になっていかないかな、と思っています。

他にも、家にいる時間が長いと色んなところに気がつきます。例えば収納。
みんな「収納が少ない、少ない」って言いますが、それもおかしくないかな?って。

収納って、あるとどんどん詰め込むだけで要らないものばっかりになってしまいますよ。
私はシンプルに豊かに暮らしたいって思っています。
豊かな暮らしって自分の必要なものがあれば良い。
豊かな暮らしには良いものがあれば良い。
そして、人には豊かな暮らしが必要だと思います。
家を建てるだけではなく、そういう思いで始めたのがパン教室だし、ステンドグラス教室だし、お茶の時間をお伝えするカフェ空間です。

どうやって家を飾ったら良いのか分からない方には、私の家、私のカフェを見て下さいと言ってご案内もしています。
展示場でない私の住まいを見てもらっています。
それをご覧になって、皆様「あんな風にしたい」と言われます。

一工務店ではありますが、皆様のお住まいの家が「家族の対話」が自然に生まれるような「器」に成長していって欲しいので、それをお手伝いが出来る会社でありたいなと思っています。

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今後のビジョンはありますか?

今はパン教室・ステンド教室など、私の代ではこんなところだけれど、次の代ではそれをどう発展していくかが課題と思っています。

借金のある時は自分の会社の事で精一杯でしたけど、本当は会社って世の中のためにあるべきものだから、社会に貢献できる会社であるべきというのが私の根本にあります。
そのためには「ものを大事に」「家を大事に」といつも思っています。

長期優良住宅がまさにそうですが、「ちゃんと住み続けましょう」、「もっともっと家を大事にしましょう」という考えです。
昨今、「古民家再生」といわれることが多いですが、これは良い材料と良い職人の腕で建てられた、価値のある昔の家を再生しようというお話。

ところが最近のか細い部材で簡単に建ててしまう様な家はリフォームしても見かけだけの再生しかできないじゃないですか。
「古き良きもの」は現代の私たちからしても「いいなあっ」と感じる訳だから、再生する価値があると思います。
本当は家だけじゃなく全てにおいてそうなのでしょう。
ものを買うにしても家具をひとつひとつ飾るにしても、使い捨てでなく、少しでもいいから「良いもの」を持って「豊か」に暮らしたいなぁという事を伝えていきたいです。

「自然素材の提案」や「職人さんの技」も高下組の家づくりには不可欠ですね

職人さんを大事にする、そして育てる。
また、木をはじめとして、自然素材の心地よさは住んでみると絶対人間になじむんです。
「休」という字は人が木に寄り添って「休」という字になりますよね。
昔から言われているように、木というものは無条件に心安まるものですよ。
住まわれる方が心休まるよう、良い素材を良い職人の技で生かしていきたいと思っています。

高下組にとってイノスはどんな役割ですか?

私はもともと住友林業が好きです。
だから、いち早く入会しました。
弊社は職人さんこそ多く抱えているけど、スタッフは少ない。
イノスからは、私たちが自分たちだけでは開発出来ないノウハウを、全部もらっています。
そこは信頼できるイノスにお任せしていて、そのノウハウに則って私たちのMoga流を生かしていけば良いと思っています。

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「イノスグループの関係図」を地で行っている感じですね

やっぱり今は地方の時代。
グローバル化の中で、やはり情報は重要です。
この時代、ネットや本を見れば確かに情報を得られます、しかしイノスには、表に出ている情報からは得られない、他の会員工務店さんの生の情報がありますので、そこを期待したいと思います。

最後に

家を建てるのは、今が一番と思っています。
家づくりのご計画を先延ばしにする方には「何で?」って思います。
私は今出来る事を積み重ねてきたから、いつもわくわくしています。
いつ終わる人生か分からないのだから、やっぱり今を一番、大事にしたい。
人生はその積み重ねです。
確かに資金の事もありますが、家づくりや家の手直しを始めない奥様たちは、いつも不満を言っておられます。
「資金がどう」のとか、「旦那さんのやる気がどう」のとか。
少しずつでもいいと思います。
その分、人生にはプラスになるはずですよ。
Mogaハウスが提案しているカーテンや、オリジナル建具、家具などから始められて、それだけでもワクワクすると言って下さる奥様が沢山いらっしゃいます。
そしてそのワクワクする気持ちがわかった方達は、必ず次のステップに進まれ、じゃ、次はトイレだけ、洗面所だけ、そしてキッチンへと繋がっていきます。
人生が変わった!!とまで言われる奥様方に私は励まされていますよ。

イノス担当より

オーナーは家づくりへのエネルギーもさることながら、大変ピュアな方でいらっしゃいます。

そして、家づくりを通じてライフスタイルを提案するという仕事を、ご自身の身をもって表現されて来られた方です。
ご主人である高下社長や周囲のサポートが更なる推進力となり、現在のステージにとどまらず、地域社会への貢献など更に高いステージでのご活躍を期待しています。

取材協力:

有限会社高下組
http://moga-house.com/

inos