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マンションと戸建てで用途が異なる「アルコーブ」とは?

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理想の住まいづくりについて実例カタログを眺めていると、壁面をへこませて趣のある空間として利用している事例を目にすることはないでしょうか。
気になり調べた結果、アルコーブという名称だとわかったものの、マンションではまったく違った使われ方をしていることに気づきます。
マンションと戸建てで用途が異なるアルコーブ。
今回は、その違いと戸建てで採用したときのメリットについて考えてみましょう。

そもそもアルコーブの意味って?

アルコーブとは部屋や廊下、ホールなどの壁面の一部を後退させてつくった空間のことを指します。
ヨーロッパの住宅でよく見られる建築技法で、本来の用途は部屋や廊下の壁面の一部をくぼませ空間を利用するために作られるもの。
日本の戸建て住宅では本来の用途で用いられるものの、マンションでは本来の用途から変化して活用されています。

マンションでのアルコーブの用途とは?

マンションの場合、アルコーブは広めの玄関ポーチのことを指します。
アルコーブを設ける主なメリットはプライバシーの確保。
共用廊下からやや内側の奥まった位置に玄関扉が設けられているため、外からの視線を遮ることができます。
玄関扉の開閉時に隣人の視線が宅内に入り込むことを防いでくれます。

また、勢いよく玄関扉を開けてしまったときや、玄関から子どもが勢いよく飛び出したときに、廊下を歩く住人にぶつかってしまうことがなく、安全面でもメリットがあります。

マンションは同じような玄関が多く並ぶため、単調な外観に見えてしまいがちに。
アルコーブがあるマンションでは外観に凸凹が生まれるため、見た目にも変化があり、見栄えがよくなる効果も期待できます。

アルコーブとサービスバルコニーを同様のものとイメージしている人も少なくないようですが、サービスバルコニーはあくまで小さな面積のバルコニーのこと。エアコンの室外機を置いたり、プランターなどの小さなものを置いたりするために設置されるスペースなので間違わないようにしましょう。

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戸建てでのアルコーブの用途とは?

戸建ての場合は、アルコーブ本来の用途として活用されます。
部屋や廊下の一部に少し奥まった空間を設け、その空間をさまざまな用途に利用します。
マンションでの用途とは異なり、アルコーブ本来の特徴を生かした戸建てで用いられる場合、間取りにアクセントをつける目的での採用だと考えられるでしょう。

戸建てにアルコーブを設けるメリットとは?

アルコーブを設けるメリットは、部屋のなかにちょっとした空間を設けられること。
室内に収納家具を設置して物をしまうのではなく、室内に特別な空間を設け収納スペースにすることで、部屋の趣にアクセントを加えることができます。

好みのインテリアなどで部屋を装飾すれば雰囲気はよくなるものの、室内空間そのものはやはり単調。
そんな風に感じる場合はアルコーブを設けることで、趣の変わった特徴的な部屋として演出することができます。

アルコーブの活用事例

部屋の雰囲気に趣をプラスできるアルコーブ。
では、どういった活用ができるのか考えてみましょう。

アルコーブベッドで遊び心のある部屋に

アルコーブの空間に作り付けのベッドを設置することで、ムードあふれる室内を演出することができます。

もともとアルコーブはバロック時代のフランス建築で多く採用されていた建築技法。
そのため、室内のイメージを洋風に変えることができます。
家具のひとつとしてベッドを購入するのが一般的ですが、「アルコーブ+作り付けベッド」の組み合わせで室内の演出を考えれば、部屋の印象は大きく変わります。

また、部屋の壁紙やカーテン、ベッドリネンのすべてを洋風に統一することで、部屋の雰囲気に華やかさや高級感をプラスすることもできます。

子どもが喜ぶかわいい部屋にコーディネートしたり、アルコーブが作る空間にシンプルなベッドを置いて落ち着きある部屋にコーディネートしたりと、好みのアレンジができるのもアルコーブの魅力といえるでしょう。

ソファを設置し、くつろぎの空間に

家族がくつろげるサイズの大きなソファには魅力を感じるけれど、限られた部屋のスペースは広々と使いたい。そんな悩みを持つこともあるでしょう。
アルコーブのメリットは室内に特別な空間を設け、そのスペースを活用できるところ。
アルコーブにソファを設置すれば場所を取らずに済むだけでなく、くつろぎのスペースにアレンジを加えることもできます。

アルコーブの考え方は和室の床の間と似ています。
床の間と聞くと掛け軸や生け花、美術品などを飾るスペースというイメージがありますが、元々のはじまりは身分の高い人が座る場所として作られたそうです。
洋風のアルコーブと和風の床の間は印象こそ違うものの、室内の壁を後退させ、くつろぎのスペースとして活用するというのは、日本でも古くから取り入れられていた発想ということになりますね。

ちょっとした書斎としても活用できる

限られた間取りのなかで書斎を設けることが難しい場合でも、アルコーブの空間を活用すれば、部屋の中に書斎スペースを設けることができます。
室内に書斎の空間をつくることで、部屋そのものの趣も変えられますね。

また、近ごろでは家事の隙間時間を利用してハンドメイドに取り組むママも増えています。
アルコーブの空間をちょっとした作業スペースにすることで、ハンドメイド専用の空間にすることもできます。

特に狭小住宅の場合は部屋数も限られており、家族の趣味や取り組みのためにひとつの部屋を使用することはなかなか難しいもの。
そういった場合でもアルコーブを活用すれば、趣味に打ち込めるスペースを構えた理想の家づくりができますね。

空間を雰囲気ある収納スペースとして活用

アルコーブはカーテンなどで空間を仕切ることで、独立した空間として利用できます。
そのため、書庫や美術品の保管場所にも適しています。

部屋をすっきりさせるためには、収納用の家具は欠かせないもの。
しかし、室内に家具が増えればそれだけ生活スペースは限られてしまいます。
アルコーブを利用すれば、室内のスペースを占有することなく、収納空間を作ることができます。

また、部屋に趣を加えることのできるアルコーブだけに、単に日用品を収納するのではなく、本棚にびっしりと書籍を並べたり、飾らずに保管してある美術品などを並べたりするのも効果的。
空間そのものが室内のアクセントになっているアルコーブだからこそ、その空間を利用し、より豪華な室内空間へと演出してみるのもいいかもしれませんね。

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アルコーブで室内に遊び心を演出してみる

マイホームは外観や内観にこだわることで特徴的な住まいにすることができますが、アルコーブのように部屋の中に設ける空間で遊び心を演出することもできます。
アルコーブの持つ特徴的な雰囲気は、趣とくつろぎの空間を作り出すことができることでしょう。
マンションと戸建てそれぞれに持つアルコーブの用途を理解し、マイホームへのアクセントとして取り入れてみてはいかがでしょうか。

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