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木造住宅の天敵、シロアリ。どのような対策が効果的?

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突然ですが、あなたは実際に「シロアリ」を見たことがありますか?

「シロアリ」という言葉を聞いた事がある、知っているという人は少なくないでしょうが、本物を見たことがあるという人は多くないと思います。

シロアリってどんな蟻?

シロアリは昆虫です、でも・・・。

シロアリは木を主食とする昆虫です。
シロアリは光を嫌うので木の表面に出てくることがないため、普段目にすることはありません。
しかし、シロアリは実は世界で最も数の多い昆虫とも言われています。

もちろん日本にも多くのシロアリが生息しています。
シロアリは木を主食とする昆虫ですので、私達が住む木造住宅にとっては、とても恐ろしい存在となってしまうのです。

シロアリは黒アリと姿が似ていて、黒アリ同様に集団で生活することから、 「白アリ(白いアリ)」と名づけられたと考えられています。

ともに集団の中に「働きアリ」「兵隊アリ」などの階層がある「社会性昆虫」ですが、 実はシロアリはゴキブリの仲間(ゴキブリ目)、黒アリはハチの仲間(ハチ目)に分類されます。
さらに、シロアリにとって黒アリは、シロアリを捕食する"天敵"なのです。

シロアリの種類と分布

地球上には約2,500種のシロアリの生息が確認されており、日本には22種類前後が生息しています。
そのうち、家屋に被害をもたらすシロアリは主に次の4種です。

土壌性シロアリのヤマトシロアリ(北海道北部を除く、ほぼ全国に分布)とイエシロアリ(関東以西以南に分布)。
乾材シロアリのアメリカカンザイシロアリ(全国に点在)とダイコクシロアリ(奄美大島以南などに分布)。

土壌性シロアリにとって水分は非常に重要で、土中から蟻道(ぎどう・シロアリの通るトンネル)を伸ばして水を運び、木材を加害します。

一方、乾材シロアリは乾燥した木材に含まれるわずかな水分で生きられるので、 輸入家具の木材の中に入って来たり、羽アリになって飛来して小屋裏のような乾燥した木材のあるところに住みついたりします。
土壌性シロアリとは侵入経路が異なるので、同じ措置では防ぐことができません。

乾燥シロアリの中でも、特に今、問題となっているのが、アメリカカンザイシロアリ。
アメリカカンザイシロアリは乾燥した木材を好み、小屋裏の木材や家具などを食害します。

元々は米軍の持ち込んだ家具と一緒に米国から日本に来たと言われていて、日本に来てから比較的日が浅く、米軍基地のある横須賀や岩国、佐世保、沖縄などからその被害が始まりました。

シロアリの生態

職蟻は体長6.0mm前後、兵蟻は体長8.0〜11.0mm。
蟻道を作らないため発見が非常に難しく、気づいたときには大きな被害になっている可能性があります。
被害箇所に落ちている糞粒を発見することで、被害に気付くということも多いようです。
九州以南に生息するダイコクシロアリもアメリカカンザイシロアリと同じ性質を持っています。

一方ヤマトシロアリは、数千~数万頭の比較的小規模の巣(コロニー)を形成して活動します。
加害部分がコロニーとなっていることが多く、駆除は比較的容易です。

イエシロアリは、数百万頭規模のコロニーを形成します。
土中に塊状の巣(本巣)を造り、そこから蟻道を伸ばして途中に分巣を造り、その範囲は最大半径100mになるものもあります。
本巣の生殖虫を駆除しなければ意味がなく、駆除は容易ではありません。

また防蟻業者の報告では、昨今の地球温暖化の影響か、従来イエシロアリのいないといわれていた北海道の函館など一部の道南地域でもイエシロアリの食害が認められています。

またシロアリは、木材だけでなく進行方向にあるあらゆるものをかじって穴を開けます。
例えば、食べはしませんがレントゲン室の放射線遮蔽用鉛板やコンクリートまで穴を開けてしまうのは驚くべき能力です。

そうやって様々な隙間などから家に入り込み、私たちが気付かない間に被害を与えているのです。

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シロアリ被害から家を守るには

木造住宅の劣化原因は、1位が腐朽、2位がシロアリによるものだと言われています。
腐朽やシロアリの被害を受けると修復が必要になりますし、家の資産価値が下がってしまいます。
また、被害が大きいと耐震性能さえも低下してしまいます。

住宅の防蟻・防腐措置は、建築基準法で定められています。
「構造耐力上主要な部分である柱、筋かい及び土台のうち、地面から1メートル以内の部分には、有効な防腐措置を講ずるとともに、必要に応じて、シロアリその他の虫による害を防ぐための措置を講じなければならない。」(施行令第49条2)

新築の家を建てようとしている人にとって、大切な家屋に深刻なダメージを与えるシロアリ被害は、まさに脅威です。
木造住宅に住む限り避けては通れない事ですから、安心して暮らせる家の確保のために、家を建てるときにシロアリ対策を積極的に行う人が多いことも頷けます。

防蟻処理は木造住宅には必須となっていますが、薬剤の耐久性能には限界があるので、5年毎の点検と必要に応じての再施工を行うのが一般的です。

また、近年では新築時に床下にパイプを設置し、薬剤を注入することで、シロアリを確実に防除する『バリア工法』という防蟻処理方法もあります。

しかし、パイプからの薬剤散布はまんべんない散布が難しいので、一度シロアリが発生してしまうと巣の根絶までは難しいのではないかという人もいます。

防蟻薬剤には様々な種類があり、なかには防蟻薬剤そのものを嫌う方もいるでしょう。
そのような方のために、シロアリが好む薬剤入りの餌を家の周囲に設置してシロアリを駆除する『ベイト工法』という防蟻処理方法もあります。

これに使用する薬剤は人やペットに優しいけれども、シロアリには強い効き目があり、まさに環境に配慮しながらシロアリ駆除が出来る優れものです。

この薬剤は通常の薬剤のようにすぐにシロアリを殺すものではなく、脱皮を妨げることによってシロアリを殺す効果があります。

家の周囲に設置した薬剤入りのエサをシロアリが食べて、それを仲間へ分け与えることで、巣にいるシロアリ全体へと薬剤を行き渡らせます。
体内に薬剤を取り入れたシロアリは時間がたつと薬剤の効果で脱皮ができなくなり衰え死んでいき、そのうち巣にいるシロアリを根絶へと導くことができるのです。

この薬剤は脱皮をする生物にだけ効果を発揮するので、哺乳類・魚類等に対する毒性は低く環境的にも安全性の優れたものです。

その他にも、人体やペットなどに安全なホウ酸系の防蟻剤もあります。
ホウ酸系防蟻剤は効果が高く長続きする利点があり、アメリカなどでは主流の防蟻薬剤として用いられています。

最も効果的なシロアリ対策は

シロアリは木造住宅にとって非常に脅威なものです。
しかし、対策工法はいくつもあり、多くの種類の薬剤も販売されています。

逆に言えば、どの工法、どの薬剤を使用するのか選択するのが難しいのも事実です。

最も効果的な方法は、シロアリの生態を熟知し、薬剤の性能と効果、使用する工法を理解し、そこまできちんと説明して施工業者を探すことだといえるでしょう。

シロアリについてはまだまだ話したいことが沢山あるので、次の機会にじっくりお話ししたいと思います。

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