家族を育てる家

はじめての家づくり

構造計算しなくても木造住宅は建てられる、それって本当のこと?

630420 20170616稲葉担当 pixta_32577935_M.jpg

木造住宅で通常構造計算が行われていないという事実は、建設業界の中では半ば常識です。
しかし、実際に家を建てる人や、一般的にはあまり知られていません。
一生に一度の高額な買い物と言われる家。見た目や設備にはこだわるものの、最も大切な家の骨組みについては住宅建設会社に任せてしまいがちです。地震大国の日本だからこそ人任せにせず、もっと興味をもつべきではないでしょうか?

今回は、建築業界で「四号建築物」や「四号建物」と呼ばれる木造2階建て住宅では、構造計算が行われない理由についてご説明したいと思います。

構造計算をするってどういうこと?

構造計算にはいくつか種類がありますが、ここでは小規模な建築物に用いられる「許容応力度計算」について説明します。

許容応力度計算とは、建築物にかかる固定荷重や積載荷重に長期荷重、及び地震力などの短期荷重を想定して応力(部材内部に生じる抵抗力)を算出し、それぞれの部材がそこにかかる応力に耐えられるかの許容応力度(限界点)を比較するものです。

建築基準法では、「許容応力度計算(構造計算ルート2)」の進め方を以下のように示しています。

  1. 建築物の構造耐力上主要な部分(柱・梁・床・壁など)に、荷重(自重や積載荷重等)や
    外力(地震や風圧等)が作用した際に生じる応力を計算する。
  2. 構造耐力上主要な部分の断面に生じる長期・短期応力を、応力の組み合わせによって計算する。
  3. 構造耐力上主要な部分ごとに計算した長期・短期応力度が、長期・短期許容応力度を超えないことを
    確認する。
  4. 構造耐力上主要な部分である構造部材が変形・振動により使用上支障が起らないようにする。

以上のことを、構造計算ソフトなどを用いて検討します。

四号建築物って何のこと?

次に四号建築物について説明します。
「四号」というのは『建築基準法第6条1項四号』のことです。
では、この「四号建築物」は具体的にどのような建築物のことを指すのでしょうか?

  • 100㎡以下の建物
  • 木造で2階建て以下かつ延べ床面積500㎡以下かつ高さ13m以下かつ軒の高さ9m以下
  • 木造以外で平屋建て以下かつ延べ床面積200㎡以下
  • つまり、木造2階建ての家は、ほぼこの四号建築物に該当します。

四号建築物が構造計算されない理由?

四号建築物には、『四号特例』と呼ばれる特例があります。
まず、『建築基準法第20条四号』では、四号建築物(木造住宅)の構造耐力について、次のいずれかに適合する事を必須としています。

  • イ:当該建築物の安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準に適合すること
  • ロ:前三号に定める基準のいずれかに適合すること


簡単に説明すると次の通りです。
イは、行政が定めた基準に適合していること。
ロは、構造計算を行うこと。
法律で、四号建築物(木造住宅)は、イ・ロいずれかの基準を満たすことが必須となっています。

しかし、一方『建築基準法第6条の三』では、「確認申請の簡略化」が認められています。
確認申請の簡略化とは、資格を持った建築士が設計した家であれば、確認申請時に壁量計算書や構造に関する図面 等の提出が省略できるというものです。
これを「四号特例」と言います。

つまり、「四号特例」があることで、資格を持った建築士が四号建築物(木造住宅)を設計すれば、確認申請時に必要な資料提出が省略でき、さらに構造計算もしなくて済むのです。
※行政や審査機関によっては、参考として資料提出を求められる場合もあります。

では、木造住宅の構造をどのようにチェックしているの?

四号建築物(木造住宅)は『四号特例』があることで、構造計算をしなくてもよいと言いました。
しかし、守らなくてはならない法律があります。
それは、『建築基準法施行令40~49条』で定める「仕様規定」を満たすことです。
仕様規定について今回詳しくは説明しませんが、もし資格をもった建築士が仕様規定に則して四号建築物(木造住宅)を設計していれば、たとえ構造計算をしなくても建築基準法に定める構造耐力を有している家だと認められるという意味です。
さらに仕様規定には、地震や台風に耐える為の壁量の規定もあるため、仕様規定を満たしてさえすれば安全な住宅だと思えますが、実際に仕様規定を満たした四号建築物(木造住宅)を構造計算してみると、構造計算上の必要な壁量に対して2~4割も壁量が不足している家が存在するとも言われています。
法令の定める仕様規定は満たしているのに、構造計算すると不適合になってしまうなんておかしな話です。

四号特例の廃止案は実行されず

四号特例で建てられた家では壁量が足りていないなどのトラブルが発生したことなどをきっかけに、2009年に国土交通省が四号特例の廃止案を発表しましたが、結局廃止されないまま現在に至っています。

「仕様規定」を守るだけで本当に安全な家と言える?

建築に関する法律は煩雑で判断しづらい内容も多いため、建築に携わるすべての人が、すべての内容を理解できているとはいえないのが現状です。
資格をもった建築士や大手住宅メーカーの営業担当者でさえ、間違った解釈をしている人もいます。
四号建築物(木造住宅)についても同様です。
仕様規定に準じた家だから、建物の安全性は確保されていると決めつけるのは間違いです。仕様規定に準じた家でも、建物の安全性が確保できていないこともありますし、もちろん仕様規定に準じた家であっても、構造計算することで安全性の確保ができていることをきちんと確認しても良いのです。
何よりも重要なことは、建物の安全性が確保できていることだということを忘れてはいけません。

私たちにできること

消費者である私たちができることは、「わからないから」「難しいから」といって住宅建設会社任せにせず、どんな些細なことにでも関心を持ち、もし疑問点や不明なことがあったら、何でも聞いてみることです。
あなたが家を建てるときは、住宅建設会社に「構造計算していますか」と一言聞いてみてはいかがでしょうか。
その住宅建設会社が家の安全を第一に考えている会社であれば、「構造計算はするのが当たり前です。」としっかりと答えてくれるはず。
木造住宅建設会社で構造計算をしている会社であればなおのこと。安全な家づくりをしている会社だといえるでしょう。
さらに、構造計算の結果を書類にして渡してくれる住宅建設会社であれば、さらに信頼できるといえるでしょう。

<関連記事>

家を建てる時っていろいろなことが気になりますよね。解決した方はこちらから!!


inos