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O様邸

自然と共存する、次世代の住環境を実現

  • 北海道
階数
2階建て
延床面積
202.71㎡
家族構成
ご主人、奥様、お子様3人
施工会社
シノザキ建築事務所㈱

雪化粧をした丘陵地帯が、春には一斉に鮮やかな緑に変わります。その丘陵地の間を穏やかな川が流れ、緑豊かな川辺には野鳥や動物たちも集い、一年を通して自然の息吹を感じられる場所————。
こちらの土地は、都市部にも近くありながら北海道の広大な自然にも触れられる街。そしてこの街こそ、Oさんが子ども時代を過ごした原風景を残す場所だと言います。
「マンション住まいから、家族の家を建てようと計画をはじめたとき、山があって川があって、起伏ある生まれ育った自然風景を真っ先に思いました」

インターネットで土地探しをし、理想通りの自然の景色を感じられる土地を購入したOさん。その風景を、家にいながらにして感じられるような暮らしを思い描いていました。
「四季を感じられるような大きな開口部を持ち、まわりの自然風景とも同調するような自然素材を使った、木の家に暮らしたいと思いました。外装には大好きな札幌軟石も使ってみたいし、色々なアイデアがあったので、自由度の高い家づくりを求めていました」
そんな希望のすべてを叶えてくれ、Oさん夫婦のイメージを超える設計の提案をしてくれたのが、兄夫婦を介して出会ったイノスグループに加盟するシノザキ建築事務所でした。

札幌軟石を用いた外観が、威風堂々とした佇まいのOさん邸。北側道路に面したインナーガレージの奥が、木をふんだんに使ったエントランス部分となります。玄関を上がって右手にクランク状に進むと、LDKが広がっています。床を一段下げたタイル貼りの床、クルミ材の階段へと続く無垢板、ゼオライト塗装を施した壁。大空間となったLDKにはさまざまな自然素材が使われ、繋がったひとつの空間でありながら、異なった床レベルをつくることで、広がりと豊かな表情を生みだしています。

「このオープンな空間の中に、いくつもの居心地のいいスペースができたのは、何よりも嬉しいことですね。ダイニングから1段下がった場所のソファに身を沈めて窓の外を見上げると、大きく空が開けていてすごく気持ちがいいんです。家族が集まる場所だから、温かい空間をつくりたくて、薪ストーブを検討していました。でも薪を用意するのに手間がかかるということもあり、最終的にはペレットストーブを設置したんです。階段を椅子代わりにして、家族がストーブを囲んで集まる時間はなんとも至福な時ですね」
修理をしながら大切に使い続けられているダイニングの椅子が、新築にほどよい味わいを生んでいます。さらに天井からは、段ボールの再生材からつくられたというアメリカ製のペンダントライト「グレイパンツ」が、空間をモダンに演出します。

そんなリビングを、ぐるりと見下ろすように2階へと続く階段が伸びています。階段途中には、広い踊り場が設けられていて、大きな窓に面して長い机が造作されています。天井ではシーリングファンがゆっくりとまわり、このスキップフロアはどこか屋外のような開放感さえ感じることができます。
「スキップフロアで空間に変化をつけてほしいと依頼しました。平面ではなく、立体的な、どこか迷路のような面白さが気に入っています」
このスキップフロアに設けられた長い造作机は今、高2、中1、4歳という、年の離れた3人の子どもたちが思い思いに使っています。さらに、階段を上がったところにはゆったりとしたホールが広がっています。部屋をつなぐ通路以上の役割をもつこのホールには、子どもたちのための大きな本棚やトランポリンなども置いてあります。子どもたちの部屋は2階にまとめられ、それぞれの部屋から出たところに広がるこの空間が、遊び場のような役割を果たしているのです。

暮らしを支えるユーティリティ部分には、奥様のアイデアを活かして設計されています。
洗濯干しが楽になるように、洗濯室はベランダに直結。

「キッチンには、来客があったときでもシンクの中が見えないよう、目隠しパネルを取り付けました。さらにキッチンの食品庫は、育ち盛りの子どもたちのため食料をたっぷりストックできてとても便利です」と、奥様は語ります。

「この家に暮らして驚いたのは、何より生活環境が良いことです。結露しないとか、隙間風が入らないとか、そして暖かいことも重要です」
ガレージのたたきには、凍結防止のためにロードヒーティングシステムが採用され、居住空間のガラスはトリプルガラスを使用。北海道という北国だからこその工夫の数々に加えて、研究者気質だというOさんは、住宅設備のプランに夢中に。エコロジーへの意識も高く、自ら情報収集を行ったといいます。

「設備については、最も情熱を注いだといっても過言ではありません。床下に仕込んだスラブヒーターで、断熱材の上に打設したコンクリートスラブにパイピングして加熱、空気と床を温めるシステムなんです。それから、キッチンの北側の小部屋に室内の空気を排気しています。その小部屋は断熱材のみで、暖房はしていません。つまり、生活の排熱でガレージの雪を溶かすシステムなんです」
さらに自然エネルギーを使うことについても、Oさんは特別なこだわりを持っており、新居には太陽光発電を設置しています。2018年におきた北海道胆振東部の地震では、道内全域の電気の供給がとまってしまうブラックアウトに陥りました。太陽光電気を用いることは、そうした状況下でも電気を生み出すことができる、堅実なリスクヘッジとなっているのです。2系統の電気配線により、太陽光発電により蓄電された電力は、冷蔵庫や照明器具の動力として優先的に使われます。そして停電などの非常時でも、例えば階段脇のペレットストーブを点火することもできるのです。

住まいのエンジニアリングに高い関心を持ち、実験精神のあふれる建主と建築家だからこそ実現した次世代の家。
心を穏やかにする自然風景に囲まれながら、大切な家族がひとつになって暮らす場所。居心地の良さを叶えてくれるのは、暮らしやすい日常を与えてくれる温熱環境だけでなく、非常時のライフラインを整えることでもありました。
それは、これからの住宅づくりの見本とも言えるのかもしれません。