家族を育てる家

はじめての家づくり

昔から、日本の家では換気を重視していたって知っていますか?

630420 20170831廣田TM pixta_24345730_M.jpg私たちが住む日本は、四季を体感できる貴重な気候の国です。
季節の到来を肌で感じ、それぞれの季節を楽しむことができます。

とはいうものの、夏の蒸し暑さだけは昔から敬遠されていたようです。
ジメジメとした湿気の多い日本の夏をどうやって乗り切れるのか、いろいろな工夫がなされてきました。
すだれ、打ち水、風鈴、夕涼みなどは、生活の工夫から生まれた日本の文化です。

また、昔の日本の家も、夏の気候を意識した造りになっていました。
分厚い藁葺き屋根と深い軒は日射による室内温度の上昇を防ぎます。
"田の字"の家の造りは、襖を外せば一部の土壁と柱だけ残してガランドウになり、自然の風が各部屋の隅々にまで行き届くことが出来ます。

蒸し暑さをできるだけ解消するために、屋外の涼しい空気をなるべく多く屋内に取り入れるような造りになっていたのです。
その考えは、現代の家でも「換気」という形で引き継がれています。

「家の換気」について少し説明したいと思います。

意外かもしれませんが、換気は重要です

換気方法には、大きく分けると2種類あります。
「自然換気(パッシブ換気)」と「機械式換気」です。

「自然換気」はその名の通り、機械に頼らない自然通風や空気の温度差での煙突効果による換気方法です。
一方「機械式換気」は、強制的に給気と排気、若しくは、給気・排気のいずれかを機械の力で行う方法です。
機械式換気は今では新築住宅に義務化されています。

最近は木造住宅でも、サッシや新建材などで外気を遮断するなど、家自体が高性能化し、昔の家と比べて気密性がとても高く、隙間風が入りづらくなっています。
また、家が高気密・高性能化するにつれ、室内に使用した壁紙やドアなどから発生するホルムアルデヒドやトルエンなどの化学物質が、隙間風が無いゆえに屋外に排出されないことが原因となり、人体に影響を与え、頭痛や目のかゆみ、鼻水、喉の痛みなどの症状を訴える人が増え始めました。

これが家に起因する病気、シックハウス症候群です。
そのため、2003年(平成15年)7月1日にシックハウス対策の法令等が施工されました。
それ以降の建物では、指定された化学物質を発散する建築材料に使用量制限が設けられ、機械式換気で24時間連続して強制的に換気することが義務付けられました。

シックハウスに関する化学物質の濃度を下げることが目的のため、2時間かけてその部屋の空気が一通り入れ替わるくらいの、ゆるやかな換気能力です。
ちなみに、この換気方法を一般的には『24時間換気』と呼びます。

今回は、24時間換気=機械式換気方法についてお話したいと思います。

機械式換気方法にはどのような種類があるの?

通常、24時間換気を行うために、新築時には換気する居室の容積と換気扇の能力、ダクトや換気扇フードなどによる圧力損失を考慮して換気計画を行います。
ここでいう換気扇の能力とは、時間あたりに換気できる空気の量を指します。

機械式換気は第一種換気~第三種換気の3種類あり、それぞれ特徴が異なります。
次は、それぞれの特徴について説明します。

第一種換気の特徴

第一種換気とは、「屋外の空気を室内に取り込むのと、室内の空気を屋外へ出すのを同時に機械で行なう」換気方法のことです。

通常第一種換気は、一部屋ごとに給気用の換気扇1台と排気用換気扇を1台、外部に面した壁に設置することが多いですが、1台の大きな機械で家全体の給気と排気を同時に行なうダクト式第一種換気装置も近年増加してきました。

メリット

一番のメリットは、給気排気共に機械で行うので、計画的な換気が行なえる点でしょう。
給気する空気の量と排気する空気の量を機械の力で制御できるので、計画通りに換気が行なわれます。
加えて、もうひとつの大きなメリット。第一種換気装置には熱交換機能を付加することが容易に可能です。

熱交換素子を付加した一種換気装置は、室内の暖かい冬場では、暖かい空気を屋外に出す際にその熱を屋外から取り込んだ冷たい空気に受け渡すことが出来ます。
夏場は逆に、室内の冷房された冷たい空気を屋外に出すときに、屋外から取り込んだ暑い空気の温度を下げて室内に取り込むことが出来ます。

屋外の空気をなるべく室内の気温に近づけて取り込むため、室内はいつも暖かい(または涼しい)状態を保てます。また、排気による熱損失が少なくなるので、省エネにも大きなメリットがあります。

デメリット

機械式換気方法の中で一番高額です。
排気、給気ともに機械の力を借りて行うため、他の機械式換気方法に比べるとイニシャルコスト、ランニングコストともにかかります。
もし、1台の機械で法律で決められた量の換気ができない場合、追加で機械を設置しなくてはなりません。
その際、高額な機械の費用も追加でかかり、かつ設置場所の確保もしなければなりません。

また、ダクト式の場合、ダクトの内部に溜まった塵の清掃など、メンテナンス面での容易性も考慮された機器を導入しないと後から困ることになりかねません。

第一種換気を使用するのに適した建物

高気密・高断熱の家など

第二種換気の特徴

第二種換気とは、「機械式換気扇を使用し屋外の空気を屋内へ取り込み、その圧力の差を利用して、排気口等から自然に空気を屋内から屋外へ排出する」換気方式のことです。

メリット

屋内を常に正圧(注1)とする事が出来るため、屋内の埃を空気と同時に排出するので、屋内の掃除が少なくてすむかもしれません。

ふくらませた風船をイメージすると分かりやすいと思います。
風船をふくらませるのに、風船の口から空気をドンドン送り込むと風船がパンパンに膨らみます。
この状態が「正圧」です。
空気が逃げないように押さえていた指を離すと、風船の口から空気が一気に噴出します。


家でいうと、外気をどんどん屋内に取り込むことで、屋内の気圧が高くなます。
そして屋内の空気は自然に排気され、それと同時に埃なども屋外に排出されるという仕組みです。

注1)正圧とは屋外と比べて屋内の気圧が高いこと

デメリット

屋内の気温や湿度は、屋外の影響を大きく受けてしまいます。

夏のジメジメした蒸し暑い空気や、冬の冷え込んだ空気を、そのまま室内に取り込んでしまうため、ハウスメーカーや住宅建設会社では採用されていません。

中には、「熱交換装置」が備わった換気機器もありますが、戸建ての住宅用としてはサイズが大きく、また効率良く熱交換ができないため、戸建て住宅ではほとんど使用されません。

第二種換気を使用するのに適した建物

病院内などのクリーンルーム
大規模な工場
ビル、倉庫、屋内駐車場

第三種換気の特徴

第三種換気は、「機械式換気扇を使用し、屋内の空気を屋外にはき出すときの圧力の差を利用し、給気口等から屋外の空気を自然に屋内に取り入れる」換気方式のことです。
第二種換気と反対の方法が、「第三種換気」です。

メリット

第三種換気の機器は、第一種換気、第二種換気の機器と比べると安価で小型です。
したがって、多くのハウスメーカーや住宅建設会社でも採用され、戸建て住宅に用いられることが多いです。

シックハウス法で設置が義務づけられている24時間換気は、2時間に1度、屋内の空気を入れ替えることを目安としています。
そのため、家全体で1台の大型の換気機器を使用して換気を行なうよりも、部屋毎に小型の換気機器を設けるほうが効率的。
さらに、小型の機器の方が騒音も少なく、イニシャルコスト・ランニングコストからみても経済的。

そのために、第三種換気は戸建て住宅に用いられることが多いのです。

デメリット

第三種換気では、自然に空気を屋外から屋内へ取り入れるため、第二種換気方式と同様、屋外の気温や湿度の影響を受けやすくなります。

また、第二種換気とは反対に、強制的に「屋内の空気を屋外へ排出する」ため、家の中が「負圧」(注2)状態になり、年配の方や子供が玄関のドアを家の中から外に開ける時、強い力が必要になる場合があります。

風船の空気を強制的に抜くのをイメージするとわかりやすいと思います。
強制的に空気を抜くということは、どこからか風船の中に空気を入れないと真空状態になってしまいます。

これを家に置き換えて考えると、常に屋内は空気を欲している状態となり、家のあらゆる隙間(サッシの隙間や玄関ポストなど)から屋外の空気を屋内に取り入れようとします。

したがって、「負圧」状態では、圧力が年配の方やお子様が屋内側から玄関のドアを開けるときに強い力が必要となる可能性があるのです。

気密性の高い家になればなるほど、このような状態になり得ます。
注2)負圧とは屋外と比べて屋内の気圧が低い状態のこと。

第三種換気を使用するのに適した建物

一般的な住宅(排気ファンと給気口の配置を検討した上で)

一番オススメの換気方法は?

これまで換気の種類についてご説明していきましたが、一番家に適した換気方法はどれなのでしょうか?
それぞれメリット、デメリットはあるようです。
とはいうものの、最近の高気密・高性能な家で、永く快適な生活をおくるには、機械式換気で給気と排気を調整できる第一種換気がおすすめのようです。

しかし、ハウスメーカーや住宅建設会社が採用しているのは第三種換気が一般的。
コスト面や機器の大きさなどから考慮すると、第一種換気は少々高嶺の花なのかもしれません。

但し、第一種換気は屋内外の空気を上手く利用する換気方法。

熱交換素子を付加した第一種換気が、一番省エネルギーで環境にやさしい換気方法だといえるでしょう。

もしもあなたが環境に興味があれば、換気方法にもこだわってみるのも、面白いかもしれませんね。

参考:
換気について マーベックス

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