知っていますか?住まいを守る神様がいるってことを
わが国には、八百萬(やおよろず)の神様がいると言われます。
八百萬とは、「数え切れない程たくさん」という意味で、『古事記』や『日本書紀』にも記載されていますが、神社にお祀りされている神様だけが、その全てではありません。
もともと、四季の移りかわりを敏感に反応しながら生活の営みを続けてきた日本民族は、農耕民族として太陽や雨などをはじめ、自然の恵みは何よりも大切なものでした。自然界に起こる様々な現象、天変地異、それを神さまの仕業として畏(おそ)れ、敬ったことに信仰の始まりがあります。そして自然をつかさどる神様は、私たちの生活のすべてに関わる神様として、人々に崇(あが)められるようになったのです。
今回は、住まいに関わる神様について、ちょっとご紹介したいと思います。
どこにいるの?住まいにまつわる神様は?
では、住まいにまつわる神様はどこに居るのでしょうか。
家宅六神(かたくろくしん)と呼ばれる建物の材料や構造を示した六つの神様(六柱)がいます。
『古事記』において、国産みを終えた伊邪那岐(イザナギ)・伊邪那美(イザナミ)の二柱の神は、神産みを始めます。
神産みの最初に大事忍男神(おおことおしおのかみ)が産まれた後に、家宅六神が順に産まれています。
このように、二番目から七番目に生まれた家宅六神は非常に重要度の高い神様と位置づけられているのです。
六柱(六つの神)
- 最初に産まれたのは、石土毘古神(いわつちびこのかみ)。
家の材料である石と土(壁土)を表しています。 - 2番目が、石巣比売神(いわすひめのかみ)。
石巣は石砂のことを表しています。 - 3番目は、大戸日別神(おおとひわけのかみ)。
「大戸」は家の出入口のことで、風雨・侵入から守る神様。 - 4番目は、天之吹男神(あめのふきおのかみ)。
「吹」は屋根を葺く動作を表し、『神名考』では屋上の神としている。 - 5番目に産まれた、大屋毘古神(おおやびこのかみ)。
葺き終わった屋根を表し、災厄を司る神様。 - 最後に産まれたのが、風木津別之忍男神(かざもつわけのおしおのかみ)。
この神は、暴風から家を守る神として、家宅六神の最後に入れられたものと考えられます。
これらの家宅六神が建物の材料や構造を示し、建物を守ってくださっているのです。
家の場所や部位にいる神様
家の材料や構造を示す家宅六神の他にも、さらに部位ごとにも神様がいます。
主な神様をご紹介しましょう。
福を受ける神「大歳神」
年明けの1月1日に訪れる神様「大歳神」(おおとしがみ)です。
年末には新年に向けて大掃除をして「大歳神」のお迎えの準備をしましょう。
それを行うと、一年間家や家族を災いから守って下さるのです。
水の神様「天之水分神」
水の神様は「天之水分神(あめのみくまりのかみ)」といわれ、農作物を耕す為に必要なお水(農業用水)をお守りされています。
台所・浴室「火之迦具土神」「三宝荒神」
これらの場所では火を使うことから、火の神様「火之迦具土神(ひのかぐつちのかみ)」や「三宝荒神」(さんぽうこうじん)が火事を起こしたりしないように守ってくれるといわれています。
台所にお札が貼られている家も多くあることかと思いますが、荒神の名の通り悪いことが許せない性格なので、火から守ってくれると同時にこれらの場所をキチンとお掃除をして、不衛生にならないよう注意してくださいと、家人に意識させる意味も込められているようです。
戸棚や柱「大黒様」(だいこくさま)
家の中で一番大きな太い柱は大黒柱と呼ばれています。
家の中の中心となる太い柱が該当しますが、その柱の上などに「大黒様」は鎮座されているといわれています。
ご存じのとおり、大黒様は商売繁盛の神様。一般的に、大黒様の置物は頭よりも高い場所で南向きあるいは東向きに置くとよいと考えられています。
トイレ「烏枢沙摩明王」「弁才天」
トイレにも神様はいます。
「烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)」は炎の神であり、この世の一切の汚れを焼き尽くす功徳を持つと言われています。
仏教に包括された後も「烈火で不浄を清浄と化す」神力を持つことから、心の浄化はもとより日々の生活に起因するあらゆる不浄を清める功徳があると言われています。
トイレを清潔に保てば、家庭円満、金運などにご利益があるともいわれています。
家の門「天石門別神(あまのいわとわけのかみ)」
石の門というのは城門のようなイメージですが、この神様には家の中への悪霊の侵入を防ぐ役割があったとされます。
家庭で神様をお祀りする場所はどこに設けたら良いでしょう?
家庭にお神札をまつり、家族がお参りをする神棚は神さまをお祀りするところなので、当然明るく清浄な所になります。
神棚の向きを南向き(もしくは東向き)にして、大人が見上げるくらいの高さに設けます。
神棚を祀る場所は、家族がいつも集まれる場所であることが大切です。
神棚の下を人が通ったり、二階のある家では、その上を歩くことになるような場所は避けたいものです。
避けられない場合には、神棚の真上の天井に「雲」「空」などと書いた紙を貼ったり、神棚の宮形と天井との間に屋根代わりの板を一枚取り付けることで、神様に対する無礼を避ける事が出来ると言われています。
でも、形式にばかりとらわれず、できる形でお祀りすることが大切です。
宮形(みやがた)って何?
厳密にはお神札をおまつりする棚を神棚といい、お神札を納めるお宮を模した入れ物を「宮形」といいます。
宮形は、神棚の一部と考えてよいでしょう。
宮形の種類や大きさはさまざまです。
祀る場所に応じて適当なものを選ぶとよいでしょう。
神社、神具店、ホームセンターで購入できます。
新たに宮形を購入したら、中にお神札を納める前にお祓いをお受けになることが肝要です。
神職さんに出張してもらい、お祓いを受けるのが原則ですが、購入された宮形を神社に持参し、お祓いを受けてもよいでしょう。
お神札(ふだ)のまつり方をご存知ですか?
次に、お神札のまつり方はどうすればよいのでしょう?
宮形には、伊勢の神宮のお神札(神宮大麻(じんぐうたいま)、氏神さまのお神札、崇敬(すうけい)する神社のお神札を納めますが、その際に順番があることにご注意下さい。
例えば、宮形が三社造り(お神札をおまつりする場所が三ヵ所ある宮形)の場合は、中央に伊勢の神宮のお神札、向って右側に氏神さまのお神札、向って左側に崇敬する神社のお神札を納めます。
一社造りの場合は、一番手前に伊勢の神宮のお神札、次に氏神さまのお神札、その後ろに崇敬する神社のお神札という順番にかさねておまつりします。旅行先などで戴(いただ)いたお神札は、崇敬する神社のお神札と共におまつりします。
数多くの神様が私たちの普段の生活においても存在していると考えられています。
ここに挙げたのはあくまでもほんの一例であり、こうした数多くの神様が昔から日本では信仰され、住まいとも深いつながりが続いています。
建築工事に着手するときのしきたり、及びまつりごと
土地を守る神様に、「産土大神」(うぶすなのおおかみ)、「大地主大神」(おおとこぬしのおおかみ)、「埴山姫大神」(はにやまひめのおおかみ)、氏神(その土地の神様)等がいます。
地鎮祭はなぜしなければいけないの?
家を建てる際、一般的に工事に着手する前に、土地の神を祝ってその工事が無事に完了するように祈る祭りを執り行います。これを地鎮祭といいます。
特別な事情が無い限り、地鎮祭はきちんと執り行うようにしましょう。
特に、新しく土地を購入した場合には必ず、建替えの場合でも出来る限り行ないましょう。
少しだけですが、意味をご説明しましょう。
地鎮祭の三つの意味
地鎮祭を執り行うのには、三つの意味があります。
まず一つ目。
その土地に棲む神様を祝い鎮め、土地を使わせて頂く許しを乞います。
目には見えませんが必ず土地神様はいらっしゃいます。
これから永く住むために土地を使わせていただくのです。
心から神様に感謝の気持ちをお伝えしましょう。
二つ目。
これからの工事の安全と家の繁栄を祈願すること。
建築工事では決して事故があってはなりません。
安全に工事を進められるよう、また、完成後に家が繁栄するよう、しっかりと神様にお願いしましょう。
三つ目。
実はこれが重要です!工事関係者との顔合わせです。
地鎮祭には工事関係者も参加します。
現場監督さんや職方さんがお施主様の顔を知っていると、お客様の顔を思いながら作業をすることに繋がります。
また、お施主様も現場監督さんや職方さんの顔を知っていることで安心してお願いできるのではないでしょうか。
もし、何らかの事情で地鎮祭を行わないのであれば、最低限でも顔合わせの場を作ってもらい、地鎮祭に関わる神様、お施主様、工事関係者が三位一体となって、無事りっぱなお家が出来あがるよう皆で祈念しましょう。
★地鎮祭の祝詞(別途)
『此れの所を厳(イツ)の磐境(イハサカ)と斎(イハヒ)定めて招(ヲキ)奉る、掛けまくも畏き産土(ウブスナ
大神を始めて、大地主(オホトコヌシ)大神・埴安姫(ハニヤスヒメ)大神、また屋船(ヤフネ)大神等の御前に恐み恐みも白(マホ)さく。この度、「○○」が新しい家居を「△△」が請負ひ建てむとして、此の所の荒草木根(アラクサキノネ)を刈除き大石小石を拾ひ均(ナラ)して、今日の生日(イクヒ)の足日(タルヒ)にしも地鎮(トコシズメ)祭を慎み敬ひ執行(トリオコナ)はむと、種々(クサグサ)物を献り御祭仕奉(ツカヘ)る事を平らけく安らけく聞食(キコシメ)して、今ゆ行先此の事に関係(アヅカ)れる工匠人(タクミビト)等に手の躓(マガ)ひ足の躓(マガ)ひ有らしめず、工業(タクミワザ)は飛騨人の打つ墨縄(スミナハ)の速けく事成(コトナ)さしめ給ひて、建上(タテア)げむ真柱直く正しく取葺(トリフ)かむ甍の高く美はしく、踏馴らす土平らかに築上げし磐盤(イハクラ)の弥(イヤ)固らかに、雨風の災害(ワザハヒ)は更なり地震岩壊(ナイイハクエ)の損害(ソコナヒ)無く、弥遠永(トホナガ)に些(イササ)かの異(ケ)しき事危き事も有らしめ給はず、安(ヤスラ)けく平(タヒ)らかに常磐堅磐(トキハカキハ)に子孫(ウミノコ)の八十続(ヤソツヅ)きと共に立栄えしめ給へと、恐み恐みも称辞申鎮納(タダヘゴトマヲシシズメヲサ)め畢(ヲ)へ奉らくと白す』
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