家族を育てる家

間取り・デザイン

家の間取りを決めるときに重要なのは玄関と階段の位置です

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「新しい家が欲しい!」となった場合、新築ならやはり注文住宅で建てたいと思うのではないでしょうか?
注文住宅はお客様のご要望を反映させて設計士が図面作成する、世界で一つだけのあなたの住まいです。
あなただけの住まいを作るためには設計図が必要ですが、順序としてはまず、設計図の元になる間取り(プラン)を作成し、そこから設計作業を進めていくのが通常の流れです。

では、家の間取りを作成していく上で、どのような事に設計者は頭を悩ませていると思いますか?

住む方の使い勝手や住み心地はもちろん第一ですが、外見も大切です。
どうせ住むならカッコ良い家のほうが良いですから。
でも、カッコ良い家はある意味無駄が多いのでコストが高くなりがちです。
また、格好を重視しすぎると、家の様々な場所に工事しづらい箇所が出来やすいです。
このように格好ばかりを重視しすぎると、何かと問題も出やすいものです。

住みやすくてカッコ良い家。
でも、予算内におさまって、住んだ後も不具合の出にくい家。
私たち設計士はそう言った条件を総合的に考え、悩みに悩んで色々な考えをまとめていきます。
たまには何がなんだかわからなくなるくらい悩むこともあります。
でも、そこに住むご家族の笑顔をより所としながら、一生懸命設計士は提案します。

その中で玄関と階段の位置は、間取りを決定する上でとても重要な要素になるのです。

ご要望や用途を考えながら、建物の配置を決める

あなたはご自分の土地をじっくりご覧になった事がありますか?
建て替えを検討している方も、新しく土地を購入して家を建てようと考えている方も、そこに建つ家の間取りを考える前に、まず土地の形状や隣地の状況などを是非チェックしてみてください。

土地を眺めているうちに、実は色々なことに気づくものです。
土地のどちらの向きが、どのくらいの長さで道路に接しているのかとか、日当たりはどのあたりが一番良いのかとか、風はどちらから吹いてくるのかとか。
また、隣の家はどちらを向いていて、こちらに面している隣の家の窓は、隣の家のどの部屋の窓なのかとか、など。

さらに、土地を眺めながら想像してみてください。
外出先から車で帰ってきて、この土地のどのあたりに車を停めようかしら。
そして、どのあたりから家に入ろうかしら。
あ、自転車置き場も考えなきゃとか。
玄関を入ると廊下があって、リビングはこの辺りかしら?
やっぱり広いリビングが素敵だわ。
キッチンはこのあたりで、対面キッチンなんてお洒落じゃない。
2階へはどこから上がろうかしら。
トイレやバスルームはどのあたりにしようかしらとか。
あ、旦那の書斎は要らないわ、とか・・・。
色々と夢が膨らんでくるでしょう。

設計士も一緒です。
お客様から色々なことを聞いて、お客様の夢を出来る限り実現できるよう、土地の広さ、形、向き、周囲の状況、法制度も含めての様々な条件の中、家の内側と外側の両方を考慮して、お客様の要望に沿った間取りや図面を作るのです。

その最初の作業「間取り」を作成する時に真っ先に考えるのは、その土地に建物をどのように配置しようかということです。

そして、その配置に対してお客様の動線を考え、道路から玄関までのアプローチを考慮し、玄関や階段、部屋の配置を確定していきます。

その時には、庭をどのように作ろうか、カーポートには車何台分のスペースが必要なのか、道路から車を入れて駐車しやすくするにはどのような位置に車庫を配置したらよいだろうかとか、様々な条件を組み込んで、玄関の位置やアプローチの方向などを決定していきます。

近年の主流は、広々とした使いやすい玄関

玄関の大きさは、以前はポーチ(玄関扉の外側の庇がついた部分)と玄関ホール、そこに靴を収納するシューズボックスのスペースで決まることが多くありました。
しかし、考えてみて下さい。
今お住まいの玄関はどうなっていますか?
収納しきれない靴が散乱していたり、お買い物のカートが置いてあったり、灯油缶が隅っこにとか。
ひどいときには旦那様の趣味に使うクーラーボックスや釣りセットまでが玄関に置きっぱなしになっていませんか?

そうなのです。
玄関は屋外で使う物を置くには意外と便利な空間。
実は最近では、玄関は靴とシューズボックスを置くスペースだけではなくなってきているのです。

小さいお子さんがいる方にはベビーカー、アウトドアのスポーツをする方はその時に使用する道具、犬を飼っている方は散歩に使用するリードなどを置く場所として、多目的スペースとしてシューズクロークを設ける提案をするケースが増えています。

今やシューズクロークは「靴置き場」ではなく、それ以外にもさまざまな機能を持つようになってきているのです。
確かに、屋外で使うものは玄関近くに置くのが何かと便利ですよね。
それに伴って、玄関のスペースも広くなりつつあるのが最近の傾向です。

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スタイリッシュに省スペース!階段の配置を考える

玄関の場所が決まったら、次に階段です。
「え?なぜ階段なの?階段って1階と2階をつなぐだけのものでしょう?」と思う方もいるでしょう。
でも、玄関の次に考えるのは階段なのです。

これについて、少しお話しましょう。

最近はリビング階段を提案する機会が増えてきています。
一昔前には玄関ホールに階段を配置することが多く、リビングに階段がある家などは、著名な建築家が作ったお洒落な間取りの家で見かける程度でした。

他にも、海外のドラマや映画で広い玄関ホールや吹抜けに面した、手すりのついた立派な階段を見た記憶がある方もいるでしょう。


でもそれには理由があったのです。
それは建物の断熱性能です。
海外の家などは暖房機能と家の断熱性能が非常に高くて、真冬でも家中暖かいのです。
だから、1階の空気が上に上がりやすい吹き抜けやリビング階段を作っても、リビングが寒くなったりしないのです。

最近、日本でも断熱性能の良い家が増えてきました。
家中が暖かい家が増えてきたのです。
そこで、これに伴ってリビング内に階段を設ける家が増えてきています。

また、リビングに階段を設けると、外から帰った子供たちは2階の自分の部屋に行くためにはリビングを通らざるを得なくなります。
好むと好まざるにかかわらず、まず家族と顔を合わせない訳には行かなくなるのです。

でも、それが実は大切なのです。

そうやって、階段のあるリビングは、家族のコミュニケーションの助けとなり、家族が自然と触れ合える場所としての機能も持つようになっているのです。

ここで階段について少し詳しくお話ししましょう。

階段の形状には大きく分類すると『直階段』、『かね折れ階段』、『折り返し階段』、『らせん階段』の4種類があります。
一番良く提案するのは折り返し階段です。
狭小住宅の場合、できるだけ部屋の面積を多く取れるように、階段や廊下の面積を少なくできるように考えます。
その時に、折り返し階段の形状は、上り口と下り口の方向が同じになるので、2階の部屋をつなぐ廊下を短くする事ができ、床の面積を有効活用するのに非常にメリットのある階段なのです。

そのほかにも、省スペースのために直階段を提案することも多くなっています。
らせん階段もコンパクトにプランをまとめるうえで有効な形状のひとつです。
一昔前は『非常階段』のイメージが強かったらせん階段ですが、近年ではお洒落なデザインの階段も増えてきました。中にはオブジェのように見せる既成商品も開発され、インテリア的な役割も担えるようなものまで作られてきました。吹抜けと合わせて提案すると空間を活かした素敵なスペースになるといえるでしょう。

間取りの鍵となる玄関と階段の配置

前述の通り、間取りを考えるうえで道路からのアプローチとの関係などから玄関の配置はだいたい決まります。
玄関の位置が確定することで部屋のボリュームや配置が決まっていき、それらがうまく収まるような位置に階段を設けることになります。

「玄関に広いシューズクロークがほしい」、「家事動線を考えてほしい」、「畳コーナーがほしい」、「子供が帰ってきたら、必ずリビングを通って部屋に行くようにしてほしい」など、お客様のご要望はさまざまです。

可能な限り実現できるように頭を悩ませながら、玄関とシューズクローク、家事動線であればキッチンと洗面、家事室のつながりを意識して間取りを考えていきます。
このように部屋のつながりを優先すると、階段の位置は1階の部屋のバランスと2階の部屋の配置を考えながら決まっていくことになります。

従って、玄関と階段の配置が決まった段階で、すでに間取りは出来上がっていると同然の段階にあるのです。
設計士はお客様のご要望や建築予定地を見ながら、どうすれば家事動線が短くなるのか、各部屋のつながりが良いのか、どうすれば部屋の空間を広く取れるかなどを、与えられた条件の中でパズルのように考えて提案をしているのです。

そういったことから、全ての要素を組み入れて完成した間取りに対して、階段や玄関の位置を変えるということは、プラン全体の構成を考え直さなければいけないことになるのです。

それは、間取りがまったく別のものになるということです。

家づくりで覚えておきたい大切な基本

色々と設計士の思いを書いてみましたが、その中で言えることは、間取りを決めていく上で、玄関と階段のおおよその位置を最初に決めて、そこから間取りを考えていくのが大半の設計士のしている流れだということです。

「玄関」と「階段」
お客様にとってはさほど重要な要素ではないのかもしれませんが、その配置によって間取り全体の構成が決まってきます。
間取り提案の中で空間や部屋の使い勝手など、重要なことはたくさんありますが、まずは玄関と階段の位置を決めることが大切だということを理解していただければと思います。

これから新しい家を建てようとされている方は、その時に是非思い出して下さい。
設計士はお客様のご要望を真摯に受け止め、与えられた条件の中、全力でそれを叶えられる間取りを作ろうと時間と労力をかけて頑張ります。

だから、打合せの過程で「玄関と階段の位置はこのあたりにしましょうか。」
と設計士から聞かれたときには、よく考えてからお返事してください。

なぜなら、それ以降の変更はもう一つ別の間取りを作るくらい、すごく労力のかかる作業になるからです。
出来るなら、設計士とともに有益な時間がつくれるように、よく考えてお返事していただければと思います。

そんなことを考えながら設計士と一緒に、本当に使い勝手の良い、デザインも気に入った、満足のいくあなただけの家を造れるといいいですね。

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