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はじめての家づくり

家を建てるときに重要視したい「構造」と「断熱」について

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家を建てようと思っているあなた、何に重点を置いて住まい計画していますか?

人生の一大イベントとも言える住まいづくり。
希望は広いリビングでしょうか?使いやすい高機能なシステムキッチンでしょうか?夢が広がりますね。

快適な住まいにはどちらも必要ですが、それ以上に必要なことがあります。
それは完成してからでは目には見えない部分、「構造」と「断熱」です。
ではどのように検討したらよいのでしょうか?

ここでは構造と断熱について長期優良住宅の基準を例にお話したいと思います。
長期優良住宅の詳細についてはこちらの記事をお読み下さい。

「構造」と「断熱」に重点を置く理由

なぜ構造と断熱に重点を置くのでしょうか?
それは「家が完成してから直すのが大変な部分」だからです。

柱や梁といった構造体、壁や天井、床下に入っている断熱材もほとんどが家を壊さないと直すことが出来ない部分です。
そして「壊して直す」では、「壊す」作業が発生する分、お金も時間も余分にかかってしまいます。

新築計画時からしっかりとした構造であれば、建てた後に補強をする必要もありませんし、断熱についても十分な断熱材が入っていれば、冬の寒さに耐えられず「こんなはずじゃなかった」ということにはなりません。

安心して生活するために必要な構造とは

長期優良住宅では耐震性について、
「極めて稀に発生する地震(以下「大地震」)に対し、継続利用のための改修の容易化を図るため、損傷のレベルの低減を図ること」とされています。
つまり、大地震がきても壊れないか、若しくは壊れても少しで済むレベルの家にすることです。

これには、耐震等級2以上(等級は1~3の3段階、最低等級は1)、または免震構造であることが求められています。
耐震等級を表にすると以下のようになります。

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なお、「大地震」とは、目安として関東大震災や阪神・淡路大震災級(震度6強から7程度)の地震が想定されています。(地域によって多少異なります。)

建築基準法は最低限の基準であるため、大地震に対して人命を守るために崩壊・倒壊しないことが求められているだけで、大地震後、またその家に住むことまでは想定されていません。
すなわち建て直しを余儀なくされる可能性が高いということです。

これに対し、長期優良住宅では、たとえ大地震に見舞われても、安全性の確保に加えて、補修・補強等の措置を比較的容易にするために、一般的な構造の建築物と比較して損傷が低減されること、大地震時の変形を抑えることを目標としています。

せっかく建てたマイホームなのですから、万が一地震に見舞われたとしても、補修して住み続けることが出来るのであれば、精神的にも経済的にも安心と言えるでしょう。

また、2階建てまでの木造住宅には、構造計算を省く事ができる「4号特例」というものがあり(詳しくはこちら)、最近もこの特例については様々な意見がかわされています。

そういったことも踏まえ、構造的な審査が多く設定された、長期優良住宅の基準を利用した方が安心で安全と言えるでしょう。

快適に過ごすために必要な断熱とは?

長期優良住宅における断熱性能の認定基準は、「断熱等性能等級」といい、等級4であることが求められます。(等級は1~4の4段階)

断熱等性能等級を表にすると以下の通りです。

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表中の各年号は、その省エネルギー基準が制定された年を表しています。

なお、「平成28年基準」は「平成11年基準」と呼ばれていた基準が読み替えられたものであり、大まかな基準としては「平成11年基準」のものを踏襲しています。

最高等級4で平成11年、等級3で平成4年となっていて、「そんなに古い基準なの?」と思われるかも知れません。
しかし、2012年時点での既存住宅の統計では、「平成4年基準」と「昭和55年基準」、「無断熱」で建てられているものが大半を占めていて、「平成11年基準」はわずか5%しかないのです。

近頃は省エネへの関心が高まっていることもあり、割合は増えてきてはいるとは思いますが、まだまだ少ない状況は続いています。

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「平成4年基準」や「昭和55年基準」で最も懸念されているのは、住戸内の温度差によるヒートショックのリスクです。
ヒートショックとは、急激な温度変化により身体が受ける影響のことで、外気温の低くなる冬季に多く発生しています。

ヒートショックは、暖房の効いた暖かいリビングから、暖房が無く外気温並みに温度が低い脱衣室、浴室、トイレなど、温度差の大きいところへ移動した際に、急激な温度変化より血圧が急変することで、脳卒中や心筋梗塞などを引き起こすおそれがある現象のことです。

高血圧や動脈硬化の傾向がある人がその影響を受けやすく、なかでも高齢者は注意が必要です。
このような事故は寒い地域で起こりやすいと思われがちですが、実態としては北海道や東北より、太平洋側などの暖かい地域の方が多いです。
これは、寒い地域の人に比べ、暖かい地域の人の方が冬の寒さに対する意識が低いということを裏付けています。

暖かい地域と言っても、真冬は思いのほか気温は下がります。
断熱性能を高め、住戸内の暖房を計画的に行うことで、このような事故は必ず防ぐことが出来ます。

「当たり前」だと思っていても確認することが大事

ここまで読んでいただいて、「構造や断熱なんてちゃんとしているのが当たり前でしょ?」と思う方もいるかも知れません。
確かにハウスメーカーや工務店は家を建てるプロですから全く検討していないことはありません。

しかしながら、皆さんの予算や希望によって何を重視するかが変わります。
「自分の会社で建てて欲しい」と思うからこそ、皆さんの予算や希望に応えたいのです。

広いリビングが欲しいと言われればそれに応えようと、耐震等級を犠牲にして広いリビングを確保したり、限りある予算の中で高性能なシステムキッチンが欲しいと言われれば断熱性能を落としてシステムキッチンに回すなどといったことです。

仮に耐震等級が2から1になること、若しくは断熱等級が4から3になることで、長期優良住宅の基準は満たさなくなります。

基準を満たさないことで、違法ではありませんが、その分、生活の質は低下します。
そして何かが起きた時の経済的な負担も大きくなってしまうかも知れません。

広いリビングでなければいけない理由は何でしょうか?
システムキッチンは建ててからある程度期間が経ってから、高性能なものと入れ替えるといった選択肢はないでしょうか?

皆さんが住まいに求めるものは一体何かを、もう一度考えてみてはいかがでしょうか?

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