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座・トイレ ~家とトイレの深い関係~

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家には欠かせないトイレ。
家にトイレが無いなんて、現代の生活では考えられません。
今回は家とトイレの深い関係について、お話してみたいと思います。

日本人はいつ頃から決まった場所で用を足すようになったのでしょうか?

縄文時代の早期では、まだトイレそのものが存在していませんでした。
したがって川に直接用便していたようです。
その後、川屋と呼ばれる川の上に建っているあばら家の床に穴が開いているだけの用便所(トイレ)で用を足すようになりました。
川屋は厠(トイレ)の語源です。

鎌倉時代には、幕府が麦の二毛作を奨励したため、以降糞尿は貴重な肥料となり、貯めて汲み取れるようにと、決まった場所で用を足すことが主流となりました。
貯糞を肥料として汲み取りするために、住居とは別棟に設けることが多かったのですが、今では下水道の発達もあり、ほとんどの家庭で家の中にトイレが設けられるようになりました。
だから、雨の日や暗い夜中でも安心してトイレに行けるのです。

トイレの家相、配置する場所はどこがいいの?

風水では、トイレは家のどの場所にあっても凶相のようです。
一般的には家の中心近くにトイレを配置するのが悪いとされており、特に家の中心から半径90センチ以内に便器が掛かっていると良くないと言われています。
なぜ中心部から90センチなのかは不明ですが、おそらくトイレのドアを開け閉めするたびに、陰の気が家中に広まってしまうことで運気を下げてしまうと考えられているからでしょう。

さらに、トイレを鬼門筋に配置するのはNGと言われています。
鬼門の起源は古代中国の情勢と地形です。
外敵と強風から家を守るために、北西と南西方向に開口部や水回りを作らないようにしたのは、古代中国の生活の知恵でした。
この考えが日本に伝わった時、当時恐れられていた古の神道(丑寅の神:北東方向)と鬼門が重なって捉えられたことで、トイレを鬼門筋に配置することを強く嫌うようになりました。

今の家の性能からすると、鬼門をそれほど気にしなくても、トイレをきれいに掃除し、清潔に保っておけば、北東、南西からの外敵やもちろん強風にも十分耐えられます。
家相や風水にどこまでこだわるかどうかはあなた次第です。

家の中のトイレの位置、それって重要なこと?

意外かもしれませんが、私のような建築士にとって、トイレを家のどこに配置するかを決定するのは結構難しいこと。(もちろん先述の家相などのことも考慮しますし。)

よく目立つ場所や、部屋から丸見えの場所に配置してしまうと、落ち着かないトイレになってしまいます。
かといって、トイレを家の片隅に配置してしまうと、行くのが面倒になってしまいます。

では、特に避けたほうがよいトイレの配置とはいったいどのようなものなのでしょうか?
それは、リビング(LDK)から丸見えのトイレです。

トイレのドアを開けると、ソファが目の前にあって、座っている人と目が合ってしまう・・・。
そんなトイレは誰でも嫌ですよね。
トイレはいろいろな音も気になる場所。
人が集まるLDKのすぐ側にあると、落ち着かない空間になってしまいます。
また、くつろいで食事をしている最中に、トイレの中が頻繁に見えてしまうというのもあまり良い光景ではありません。

また、今の家では玄関の近くにトイレがある間取りは意外とよく見かけます。
しかし、昔は玄関近くにトイレを配置することを避けていました。

一つ目の理由は、昔は近所付き合いが多かったため、来客が多かったこと。
もしトイレが玄関近くにあり、来客者に玄関で話し込まれてしまうと、その家の人がトイレに行きづらくなるからです。

もう一つの理由は、今の家と比べて昔の家は廊下が多かったことです。
なるべく多くの廊下をとり、それぞれの部屋を廊下に面するように配置していました。
トイレも同様で、廊下に面し、かつ玄関を避けた場所=家の奥の端の方に追いやられてしまうことが多かったのです。

ただし近年では、土地の高騰で購入できる土地も狭くなり、それに伴い家自体の面積も小さくなってきました。
その結果、居室をなるべく広く確保しようと、廊下を少なくする工夫がされるようになりました。

また、今はインターホンも普及し、来客があっても玄関まで行かずにモニターで顔も確認でき、室内で来客の応対もできるようになりました。
そのため、今では玄関の近くにトイレを配置することを昔ほど嫌うことはなくなってきたのです。

ちょっと余談。あなたはトイレの神様?っていると思いますか?

一般的には、烏枢沙摩明王(ウスサマミョウオウ)がトイレの神様だと言われています。
密教の五大明王の一尊で、烏枢瑟摩明王、烏瑟沙摩明王、烏芻沙摩明王とも表記され、炎の神です。
この世の一切の汚れを焼き尽くす功徳を持つと言われ、仏教に包括された後も「烈火で不浄を清浄と化す」神力を持つことから、心の浄化はもとより日々の生活のあらゆる現実的な不浄を清める功徳があるとも言われています。

トイレは古くから「怨霊や悪魔の出入口」と考えられていました。
不潔な場所であり怨霊の侵入箇所でもあったトイレを、烏枢沙摩明王の炎の功徳によって清浄な場所に変えるという信仰が広まり、今に伝わっています。
汚い場所で敬遠されがちなトイレに神様がいると人々に信じさせることは、トイレを清潔に保たせるための当時の人の知恵だったのかもしれませんね。

日々進化する便器の機能

明治以降、文明の欧米化が進み、建築にも洋風の様式が取り入れられたことで、初めて腰掛け式の洋風便器が輸入され、その後すぐに水洗式の洋風便器も輸入されました。

日本で初めて便器を製造したのは日本陶器合名株式会社(現:㈱ノリタケカンパニーリミテド 食器メーカーとしてご存知の方も多いと思います。)。
和風水洗大便器(しゃがむタイプ)、洋風小便器(立つタイプ)を製造しました。

その後、日本陶器合名株式会社の一角に製陶研究所(現:TOTO㈱)を創立し、洋風水洗便器(座るタイプ)が国内で始めて製造されました。

今では、洋風水洗便器の洗浄機能付きのものが主流です。
暖房便座はもちろん、抗菌防臭仕様、洗剤不要の除菌洗浄水、防汚・防カビ機能まで備わっているものもあります。

排水量も20年くらい前では、10数リットル必要だったものが、今では3.5リットル程度まで節水されました。
たかがトイレ、されどトイレ。
トイレが日々進化している理由は、私たちの生活と深く関わるものだからこそと言えるのではないでしょうか。

トイレの広さにも気を配り、快適なスペースへ

水を貯めておくタンクがないタンクレストイレ(便器)の出現で、便器のサイズが幅:47センチ、奥行:80センチ程となり、以前に比べて大型化してきました。
そのため、幅:91cm、奥行きが150センチ~182センチの一般的な家のトイレにタンクレスの便器を設置すると、便器がトイレを占領してしまい窮屈に感じるはずです。
もし、あなたが家を建てるとき、または家のリフォームの予定があるならば、トイレのスペースは幅:1メートル以上、奥行き:1.8メートルくらいを確保しておくと良さそうです。

また、ウォシュレットのリモコンが片側に取付いているタイプの便器は、便器の中心から左右の幅が違います。
この場合、便器の配置にも注意が必要です。
家を建てるとき、リビングや浴室の広さにゆとりを持たせたいと思うのは当たり前。
でも、トイレも少し広いスペースが確保できれば、トイレがより快適な空間になりそうです。

また、トイレのカタログや便器そのものだけを見ているだけでは、実際にはどのくらいのスペースが必要なのかが分かりません。
実際にショールームや、住宅展示場などでトイレのスペースと便器の大きさと体感した上で、決めることをお勧めします。

住居の必須アイテム、それがトイレ

ホテル、旅館で、部屋にお風呂がなかったとしても、トイレだけは部屋にあって欲しいものです。
お風呂がない部屋の場合、大浴場や温泉などが別に設備されていることがほとんどですし、お風呂に入る回数もせいぜい1、2回。
しかし、トイレへは行く時間も決まっていないし、夜中に行きたくなることもあるため、部屋に無いととても不便です。

また、最近の戸建て住宅では、1階、2階共にトイレがあるのが普通です。
トイレはすぐ行ける場所にあってほしいと思う人が多いからでしょう。

家を建てるとき、トイレに充分な広さを確保するのはなかなか難しいことです。
住宅展示場で見るトイレや、住宅のカタログなどに載っているような広いトイレに憧れても、実現はできないというのがほとんどでしょう。

とはいっても、トイレでの独りの時間が一番落ち着くという人も多いと聞きます。
トイレがリビングのようにくつろぐ空間になる日も、もしかすると近いかもしれません。

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