施工と分離?それとも一体?知っておくべき「設計監理」について
マイホーム建築に向けて情報収集をしていると、「設計監理」という言葉を目にすることもあるでしょう。
「設計は知っているけれど、設計監理は知らない」「監理と管理はどう違うの?」といったように、疑問を抱く人もいるかもしれません。
実は、設計監理は建物の品質や費用に影響のある重要な業務なのです。
今回は、マイホーム建築において知っておくべき設計監理について解説します。
一体の関係にある設計と監理
一般的になじみのある「設計」という言葉。
家づくりのフローを見ていると、設計という言葉を意識する機会も多いでしょう。
設計は建築主の要望をかなえる図面を描くことが主な業務。
それだけでなく、プランニングやデザインをはじめ、予算内に収まる材料選びや法的規制への対応など、家づくりにおいてとても重要な作業を担います。
一方で「監理」は、設計図通りに施工が進んでいるかのチェックや、建築主の代理として工事現場との打ち合わせや指示を行う業務です。
その業務は多岐にわたり、敷地・建物の情報収集や基本プランの検討、設計図の作成、施工業者との見積もりの調整、施工業者との打ち合わせ、各工程の確認、完成引渡しの立会いなどの一連の業務を担います。
また、建築基準法では、工事監理者を選任し工事を監理するとともに、建築士法で工事の際は完了報告書の作成が義務づけられています。
設計段階でどれだけ理想的な図面を描いても、図面だけでは伝わらないことも多いのが住まいの建築。
それを工事現場に伝達するのも重要な監理業務のひとつです。
そのため、住まいの建築においては、設計と監理は一体の関係にあるといえるでしょう。
工事監理と工事管理はどう違うの?
工事監理と工事管理、似たような言葉のため同じように捉えられがちですが、実際は役割も立場も全く違います。
設計図通りの施工が進んでいるかをチェックするのが工事監理。
一方、工事管理は施工会社の現場監督である現場代理人のことを指します。
工事には工事計画や施工順序の検討が必要ですし、施工を担当する大工など職人の手配も必要です。
工事管理ではこれらを工程管理業務として担います。
それだけでなく、建築に使用する材料の発注や管理などの材料管理業務や安全管理、原価管理も工事管理の業務となります。
工事監理が建築主の代理人であるのに対し、工事管理は施工会社の現場代理人でもあります。
設計監理料って何に対する費用なの?
設計監理料とは、設計監理契約を結んだ設計者に支払う設計監理業務に対する報酬です。
設計監理を担う設計者は専門的知識を用い、建築士の代理となって現場をまとめていきます。
家づくりにおけるその一連の業務を見てもわかるとおり、設計監理は高額な建築費の責任を背負う重要な業務。
もちろん、その業務に対しては報酬が発生します。
一般的には設計事務所に設計監理を依頼した場合、工事金額の10%程度を設計監理料として支払います。
この金額を高いと感じるか安いと感じるか、個人差があるでしょう。
しかし、どれだけ理想的なプランやデザインを描いたとしても、そのとおりに施工されなければ机上の空論です。
施工の品質を担保するという観点から、決して高くないコストではないでしょうか。
なお、設計監理を依頼する際は、設計監理契約を結びます。建物を建てるため、設計者に設計図書の作成と監理を依頼する契約です。
契約書には、設計業務の実施期間や報酬額、支払い時期などに関連する内容が記載されています。
設計監理業務の開始後にトラブルにつながりやすい内容については、契約締結時に重要事項説明を行うことも義務づけられています。
設計監理と施工は分離か一体かどちらを選ぶべき?
マイホーム建築を依頼する際、設計監理と施工を分離して依頼するか、一体で行っている工務店に依頼するかの違いは、なかなか具体的にイメージできないのではないでしょうか。
設計監理と施工を分離して依頼する場合、設計監理者と施工者が別になります。
そのため、それぞれ個別に契約し、互いに利害関係を持つことなく、設計監理と施工の業務を分けて行います。
一方、設計監理と施工が一体の場合は、それらを一貫して担っている工務店などに依頼するケースです。
設計監理者と施工者は同一になります。
それぞれの違いを実際に理解したものの、いざマイホーム建築を任せるとなると、分離して依頼するか一体で依頼するかは悩んでしまうもの。
それぞれにメリット・デメリットがありますので、深く知っておきたいところです。
設計監理と施工を分離するメリット・デメリット
設計監理と施工を分離する最大のメリットは、手抜き・欠陥工事の発生率を抑えられるところ。
工事監理者にチェックされていることを現場が意識することで、工事現場に緊張感が生まれます。
また、工事の要所で工事監理者が現場を訪れ、図面通りに施工されているかどうかを確認するため、欠陥の発生率を抑えることにもつながります。
施工者は施工計画などを伝えるために、施工図や施工計画書などを監理者に提出します。
監理者はそれを入念にチェックするため、施工時のミスを軽減させるメリットもあります。
さらに、施工者は監理者に工事記録写真を提出しなければならないため、工事の状況を何枚も撮影します。
写真に残ることを考えると、手抜きや欠陥のある工事がないよう、撮影前に入念に点検を行うでしょう。
また、工事状況が写真として残されるのはもちろんのこと、施工トラブルが起こった際でも、工事現場の写真が有効に働くメリットもあります。
一方で、施工図や施工計画書などを作成するための手間や時間、費用がかかることから、割高になることも。
また、設計監理と施工それぞれの契約をしなければならないため、建築主にとっても手間がかかってしまいます。
設計監理と施工を一体にするメリット・デメリット
信頼性の高い施工会社に依頼することができれば、設計監理と施工一体でもメリットを受けられることがあります。
施工図や施工計画書などを作成することなく、質の高い施工を依頼できるため、手間や時間がかからず、現場での施工がスムーズに進行します。
しかし、設計施工を一貫して行っている工務店に任せた場合、予算や工期がない施工では、手直しすることなくそのまま進めてしまうケースもあるので要注意。
工事監理者のチェックがないことが、品質に影響することがある点も理解しておく必要があります。
品質に影響するコストは検討してみるべき
設計監理料は決して安い費用ではありません。
その役割や作業を理解していなければ金額にばかり目が行ってしまい、その重要性を見落としてしまいがちです。
しかし、せっかく建てるマイホームには手抜きや欠陥のない仕上がりを期待したいもの。
品質に影響しかねないコストは検討してみるべきではないでしょうか。
家族の理想を描いた図面が正しく施工されるように、設計監理が果たす役目について知っておくことをおすすめします。