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はじめての家づくり

ZEH特集③ 家のエネルギーを削減するためには

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過去2回掲載したZEH特集。
今回はその第三弾です。
家のエネルギーをできるだけ削減するにはどうすれば良いかをお話したいと思います。

家の暖かさ、涼しさの性能について

冬の性能

外気温が下がると家の中の温度も下がり、暖房が必要になります。
窓を閉めていても家の中が寒くなるのは、からだけでなく床や壁や天井などを通して、室内の熱が外に逃げていくからです。

逆に、熱が逃げにくい家にすれば、少しの暖房で暖かく過ごすことが出来ます。
そして、ZEHではどの程度まで熱が逃げにくい家にするのか、その基準が設けてあるのです。

少し難しい話になりますが、家の内側と外気との境界を「外皮(がいひ)」と呼びます。
床や窓、壁や屋根、天井など、直接もしくは間接的に外気に接するところがこれに当たります。
冬の場合、「外皮」を通して熱が逃げていくので、ここを、熱を通しにくい造りにすれば、熱が逃げにくい暖かい家になるのです。

熱が逃げにくい造りにするには、例えば、ガラス窓を二重又は三重にしたり、床、壁、天井に厚い断熱材を入れるのがオーソドックスな方法です。
その厚みや性能で、家の暖かさが決まってくるのです。

さらに難しい話をすると・・・。

その熱の逃げにくさは『UA値』と呼ばれる数値で表されます。
定義は、家の「外皮」の内側と外側に1℃の温度差を設けた場合、「外皮」1㎡の面積に対して、1秒間にどれだけの熱が移動するかを計算したものです。

ちなみに単位は(W/㎡K・・・ワット・パー・平方メートル・ケルビン)です。

熱量はW(ワット)で表されています。また、K(ケルビン)は普段使われない言葉ですが、絶対温度のことで、1度の幅は摂氏1(℃)と同様です。
UA値は小さいほど熱を通しにくい=熱が逃げにくいということです。

このUA値に関して、ZEHには基準があります
寒い地域では厳しい基準、暖かい地域では少し緩い基準が設定されていますが、ZEHのUA値のレベルは『2020年に義務化される省エネ基準のUA値』よりもずっと高い基準が設けられています。

すなわち、ZEHにするには冬、少しの熱源で暖かい家にしなければなりません。
そのために厳しい断熱基準をクリアしないといけないのです。

参考までに数値の一部をご紹介しましょう。

例えば、地域区分の「6地域」にあたる東京中心部では
2020年に義務化される改正省エネ基準UA値の基準
⇒ 0.87(W/㎡・K)

ZEHでのUA値の基準
⇒ 0.6以下(W/㎡・K)                     

ピンとこないかもしれませんが、その差は3割以上。
最低限、これだけ熱を通しにくい暖かい家にしないといけないのです。

この厳しい外皮の基準のことは『強化外皮』と呼ばれています。
外皮を強化することで、より小さな熱源で部屋を暖めて快適に過ごすことが出来るのです。
実はこれよりさらに上の基準として『ランクアップ外皮』というものも設定されています。

これに関しては別の機会にお話しましょう。

性能が売りの住宅メーカーや住宅建設会社、またごく一部の工務店では、その点に技術を駆使し、とても性能の良い家を造っている場合もあります。

ハイレベルの目安としては、東京でUA値が0.4(W/㎡・K)以下の家であれば、差し当たっては文句なしといってよいでしょう。
このレベルをクリアできる技術を持った住宅建設会社なら、安心して暖かい家を任せられると思います。

ちなみに、0.4(W/㎡・K)は北海道エリアの強化外皮基準の数値です。
ちなみに、家から出て行く熱の大半は窓から逃げていきます。
少し古い家だとざっくり、70%くらいの熱が窓から逃げていくのです。
だから、手っ取り早く暖かい家にするには、窓の性能を良くするのが最も有効です。

そのために、サッシのガラスの性能を上げるためにペアガラスやトリプルガラス、枠の性能を上げるためにアルミ樹脂複合サッシや樹脂サッシ、木製サッシなどがあるのです。

リフォームであれば、内窓を付けて窓を二重構造にするだけで、かなり暖かい家になります。

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夏の性能

夏になると太陽の日差しが強くなって外気温も上がり、家の中も暑くなってきます。
そうすると冷房が欲しくなるのですが、冷房にもエネルギーを使用します。
暖房にはエアコンや石油ストーブやガスストーブ、ファンヒーターなど色々な方式がありますが、冷房するにはエアコンを活用するしかありません。
エアコンを上手に使うために、家自体に冷房が効きやすい工夫を施せばエネルギーの使用量を少なくすることが出来ます。

そのためには、どんな手立てを打てば良いでしょうか。

夏は熱が外から室内に入ってきて部屋の中が暑くなりますが、大半の熱は窓から入って来ます。
これは、熱の大半が太陽光線として窓を通して家の中に入ってきているからです。
すると、太陽光線が窓から入りにくくすれば、室内に入ってくる熱が減って、エアコンも少しのエネルギーで動かすことが可能になるでしょう。

では、窓から光が入ってこない真っ暗な家が良いのでしょうか?
暗い家は誰だって嫌ですよね。
それに、真っ暗になったら真昼でも照明をつけなければならなくなり、やはりエネルギーを使ってしまいます。

そこで、良い物が発明されました。

窓ガラス自体に、余分な太陽光線をカットする機能を持たせるのです。
これが『LOW-E(ローイー)ガラス』です。
2枚並んだガラスの、内側の片面に光を反射する薄い金属膜を吹きつけた造りになっています。
この金属膜で太陽光線を反射するのです。

もちろん膜は薄いし可視光線は結構通過させるので、家の中が真っ暗になることはありません。
昼間、必要な明かりを窓から採りながら、不必要な熱をカットする優れものです。

このようなガラスを使用することで、夏の冷房の効きをよくすることが出来るのです。
他にも、庇を付けたり、窓の外によしずやブラインドをつけたりするのも余分な日射を減らすのに有効です。

また、太陽光線からの熱は100%窓から入ってくるのではなく、屋根や壁を通して熱の伝わりとして入ってくることもあります。
それに関しては、冬と同じように断熱性能が高い屋根や壁にすれば、外からの熱の伝わりが少なくて済むので、その分エアコンの効きを良くする効果があります。

このような方法で日射遮蔽を行うと、冷房の効きやすい家にすることが出来るのです。

この日射遮蔽も数値で表すことが出来ます。
これが『η(イータ)値』というものです。

η値は正確には「日射熱取得係数」と呼ばれており、この値が小さいほど日射熱の取得が少なくて済むので冷房の効きがよくなります。
詳しい内容はUA値よりももっと難しいのでここでの説明は省きます。
η値で夏の性能が数字として表されるので、ZEHではη値の基準が設けられています。
ちなみにこの数値は、『2020年に義務化される省エネ基準』にある数値と同じ値です。

少し話がずれますが、理系に詳しい方は疑問に思われたかもしれません。
確かに夏は日射熱を入れないほうが冷房の利きが良くなるのですが、冬場は逆に日射熱を入れたほうが太陽熱で家の中が温まって、省エネになるでしょう。

そうなのです。
これは相反することですが、どちらも大切です。
従って、家の性能を計画するときには、夏と冬と両方考えながらプランや設備を考える必要があるのです。

夏は直射日光を遮って、冬は直射日光を部屋の中に入れる工夫。
「そんなの無理!」と思いますよね。
でもやり方によってはそれが可能なのです。

そのやり方の一つ目は、自然の環境を生かしながら省エネな家を創る「パッシブ設計」
この設計はとても難しいレベルのものですが、設計士にとっては知識をフル活用させながらプランを一生懸命考えられるので、とても楽しいことなのです。

パッシブ設計に関しては奥が深すぎるので、また別の機会にお話します。

また、少々邪道かもしれませんが、夏の冷房負荷よりも冬の暖房負荷のほうが圧倒的に多いエリアでは、夏の冷房負荷低減を捨てて、冬の暖房負荷軽減に重きを持ってくる方法もあります。

『LOW-E(ローイー)ガラス』をやめて、全て『透明ペアガラスもしくはトリプルガラス』にする方法です。
いたって簡単な方法です。

夏は太陽光線がいっぱい入ってきますが、冬もいっぱい入ってきます。
一年を通せば省エネになる計算です。

夏も冬もメリットを生かそうと思えば、外付けのブラインドを併用する方法もあります。
とはいうものの、自動開閉機能が付いた外付けブラインドは価格も結構高いので、なかなか設置できないのが実情です。

どのレベルで日射取得と遮蔽を行なうかは、かかるコストと得られるメリットとの関係ですので、それぞれの建築士に相談するのが良いと思います。

ここまでは家の暖かさと涼しさに関する性能についてお話してきました。
ここから少しだけ大切なことを書くので、是非聞いてください。

家を建てるときには、家の性能も考慮して欲しい

家自体の熱に関する性能は新築の時に決まってしまいます。
この性能を後から上げることが不可能とは言いませんが、後からではものすごくお金と手間がかかります。

だから、最初にこの部分だけはケチらず、少しくらいお金をかけてもきちんとした性能の家にして欲しいのです。

毎日住む家です。
本当に最初にきちんと仕様設計しておかないと一生後悔する重要な部分です。
そこには色々な工夫が出来るので、是非あなたの家を建ててくれる住宅建設会社の方にご相談下さい。
この、暖かさ涼しさの性能に関するお話しはすごく面白くて、話すと長くなるので、また別途お話します。

ここまでは家自体の温熱性能についてお話しました。
しかし、ZEHにするには温熱性能だけでは足りません。

次に、家、本体以外の設備性能に関しても説明する必要があるのです。

これに関しては、次回にお話ししましょう。

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