家のコストを安く抑える、その秘策は『家の気密』です
皆さんが家を建てようと思ったとき、建築コスト、間取り、耐震性、デザインなど、色々な面から検討すると思います。
その中でも特に気になるのはコストではないでしょうか。
コストには、建築費用、登記費用、税金などの家を建てるときにかかるイニシャルコストと、新しいお家に住むことでかかるランニングコストがあります。
例えば、太陽光発電を新築の家に設置するとなると、もちろんその分のイニシャルコストはかかります。
しかし、発電した電気を売ることで設置時にかかった費用を回収でき、回収後は発電した電気で生活できるので、電気代がからなくなることも可能になってきます。
また、家の気密性能や断熱性能が悪いと、思いのほか電気の使用量が大きくなり、イニシャルコストの回収に時間がかかってしまったり、灯油やガスなどの別の燃料による冷暖房費用が余分にかかるということもありえるのです。
太陽光発電を設置して省エネルギー住宅を建てたつもりでも、これでは有効活用出来ていないことになってしまいます。
このようなことにならないためにも、コストよりも気にしてほしい家の性能、特に『家の気密』についてお話ししたいと思います。
気密性能が断熱性能をも左右する?
省エネルギー住宅化は主に断熱材の性能をベースに進められていますが、2012年の改正省エネ基準(一般的には平成11年基準と言います。)が施行されるまでは、基準に気密性能も加味されていました(改正省エネルギー基準に変わった時点で、気密に関する条項が削除されてしまいましたが)。
このことから見ても、気密性能と断熱性能は関連があるといえるでしょう。
もともと気密性能の表示方法は隙間相当面積「C値」で表し、これによって住宅の隙間の大きさを表わしていました。
「C値」は
家全体の隙間面積(c㎡)÷床面積(㎡)。
単位は「c㎡/㎡」で、床面積1㎡あたり、どれだけ家全体に隙間があるのかを表示しています。
2002年(平成14年)まで存在していた国のC値の基準値は、北海道でC値=2.0以下、その他の地域で5.0以下とされています。
例えば、床面積が100㎡の住宅の場合
C値=2.0とは、隙間が200c㎡(はがき1.3枚相当)
C値=5.0とは、隙間が500c㎡(はがき3.3枚相当)
家一軒全体での隙間の面積なので、割と小さく感じるかもしれませんが、このかつての日本の基準は、外国の基準に比べるとかなり低い基準です。
カナダの基準では0.9。
スウェーデンの基準では0.6~0.7以下。
両国で認められている基準は、日本の基準の約1/10。
かなり厳しい基準です。
日本の気密性能の基準が如何に低いかということが、この数値を見てもわかりますね。
隙間が多いということは、勝手に隙間から外気が室内に入ってきて、室内の空気は勝手に家の外に出ていきます。
寒い冬に、室内で暖められた空気が家の隙間を通して勝手に家の外にでていってしまうのです。
人が生活する上で換気は必要だというものの、これではかなりの熱を損失してしまいます。
気密をきちんと確保した家であれば、熱が屋外に逃げていく量を抑えることができ、それにより断熱材の効果が発揮され、最終的に冷暖房設備のランニングコストの削減にもつながるのです。
気密性が必要な4つの理由
財)建築環境・省エネルギー機構によると、家に気密性が必要な理由は4つあります。
① 漏気負荷を減らし省エネルギー化と室内温度環境の快適性向上を図る
② 壁体通気を抑制し、断熱性能の低下を防止する
③ 壁体内結露を防止する
④ 計画換気の性能保持
それぞれをわかりやすく説明します。
①省エネルギーで部屋の温度を快適にする
気密が取れていないと、冬場は隙間から冷たい外気が部屋に入り込んできて室内の気温が下がるため、暖房を強めます。
一方夏場は、蒸し暑い外気が部屋に入り込んで熱くなり、必然的にエアコンを強めてしまいます。
快適性や省エネから考えると、家の隙間は可能な限り少なくすることが有効です。
②断熱性能の低下を防ぐ
断熱材はその繊維の間に空気を閉じ込め、空気の断熱性能を利用して断熱材としての性能を確保しています。
冬場に隙間から外気が入り込むと、せっかく繊維の間に閉じ込めた温かい空気が冷やされてしまい、断熱性能が低下します。
断熱材をセーターに例えると、セーターに風が通らないようにウインドブレーカーを羽織ることで気密が発生し、暖かさを保て、本来の断熱性能が発揮できます。
③壁の中がびしょ濡れになるのを防ぐ
家の中では人の生活によって湿気が大量に発生しています。
冬場に室内の湿気を持った空気が壁の中に入り込むと、そこで外壁や床から入ってきた冷たい外気に触れて結露が発生します。
湿気が壁の内側に入り込まないようにすることで、壁内の湿気が結露して木材の腐食やカビの発生を防ぐことができます。
従って外気が侵入する隙間は出来るだけ少ないほうがよいのです。
④効率よく換気を行って嫌な臭いの発生を防ぐ
人が生活することで水蒸気や二酸化炭素だけでなく、臭いなど様々な物質が発生します。
昔の日本の家は、常に窓を開けて生活していたので、換気を意識することはありませんでした。
しかし、気密性の高い現代の家では、何もしないと室内の空気は流れず、自然換気ができないため、機械などを利用して計画的に換気することが必要になってきます。
計画的に換気しているからこそ、家の中で発生する汚染物質も排除できるのです。
家の気密は、家だけでなく、そこに住む人の身体にまで影響を及ぼしそうだということがわかりますね。
どうすれば、家の気密を測れるの?
では、家の気密性能が十分かどうかを測るにはどうすればよいのでしょうか?
答えは一つ。
現物の家で「気密試験」をする事でのみで、気密性能を測定することが可能です。
気密試験をしないと、この家のC値=〇〇と言うことはできません。
そして、気密試験は専門業者に依頼できます。
どのような試験なのかを簡単に説明すると、測定したい住宅の一箇所(窓など)に空気を排出する大型のファンを設置して、ファンを回して室内の気圧を下げます。
ある程度回した後にファンを止めて室内の気圧を測定します。
時間が経過するに従って徐々に下げた気圧が元に戻りますが、「外に出した空気の量」と「室内と外気との気圧差」を測ることで「隙間の面積」を計算することが出来るのです。
隙間が大きいとすぐに気圧が元に戻りますし、気密が良いと気圧が元に戻るのに時間がかかります。
あまりに隙間が大きいと測定不能となりますが、そのデータによって隙間相当面積を算出できます。
必要な機械は、送風機、流量測定器、気圧測定器、温度計など。
そんなに難しい計測試験ではありませんが、気密測定士の資格を持った人が半日がかりで測定するので、それなりの費用がかかります。
ただし、家の気密を測定できるのは、現物の家でのみ。
建ち上がっていない家では測定できません。
もし家を建てる前に、建てる予定の家の気密性能を知りたいのであれば、建築会社にその会社が以前に建てた家の気密性能の値を訊くことで、おおよそ判断ができるはずです。
さらに省エネルギーな換気とは
これまで気密についてお話ししてきました。
さらに高気密、高断熱で家の省エネルギー性を高めたのなら、換気装置に『熱交換換気システム』を取り付けることをお勧めします。
熱交換換気システムを利用して換気すると、冬場であれば暖かい室内の空気を排出する時に外気を同時に取り入れますが、そのまま空気の入れ替えをするのではなく、暖かい排気と冷たい給気の間で熱を移動させて換気します。
具体的には、熱交換膜を通して、排気時の暖かい空気の熱を、取り入れた冷たい外気に移動させ、室内に暖かい空気を取り込みます。
そうすることで、室内の暖房の使用量を極力抑えることが出来ます。
夏場はその反対です。
換気と熱交換換気システムにさらに興味がある方は、次の記事をご覧ください。
『昔から、日本の家では換気を重視していたって知っていますか?』
計画的に換気をしつつ、断熱材(セーター)に、空気・湿気を通さない防湿フィルム(ウインドブレーカー)を張ることで、室内で発生した水蒸気を壁内への侵入を防ぐことで外壁内部での結露を抑制することが出来ます。
家を建てる時のイニシャルコストやランニングコストはもちろん気になりますが、実は家の性能がそれらのコストとつながっていて、長い目でみると家の性能がコストを左右するということを、是非覚えておいてください。
<参考>
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