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土地を購入するときに知っておきたい「防火地域」の基礎知識

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土地探しを進めていると、不動産の担当者から「あの辺りは防火地域です」と聞かされることがあるかもしれません。防火地域では火災を防ぐための建築制限が設けられているため、マイホーム建築のために土地を探す際は知っておくべき知識といえます。
今回は、土地を購入するときに知っておきたい防火地域の基礎知識について見ていきましょう。

防火地域ってなに?

防火地域とは、火災を防ぐために厳しい建築制限が設けられた都市計画で指定された地域。一般的に、都市の中心部や駅前などが防火地域に指定されます。もし、大規模な商業施設やたくさんの建物が立ち並び密集しているエリアで火災が起これば、火が次々に延焼してしまうことが予想されるでしょう。
そのような事態が起こらないために、防火機能を高める目的で建物の構造が厳しく制限されたエリアです。

都市計画法によって定められているのは、防火地域だけでなく準防火地域もあります。取り決められた制限はそれぞれ異なるので注意しましょう。

防火地域の建築制限や条件とは

防火地域に指定されているエリアでは、建築物の用途や規模・構造によって、要求される構造が異なります。

構造延面積や建物の階数によって異なる

防火地域に建物を建てる場合、定められた構造が要求されますが、延面積や建物の階数によって違いがあります。

延面積が100㎡を超える建築物を建てる場合、「耐火建築物」の設計が求められます。また、延面積が100㎡以下でも、3階建て(地階を含む)以上の建築物を建てる場合は、同じく耐火建築物の設計が必要です。
延面積が100㎡以下、2階建て(地階を含む)以下の小規模な建築物を建てる場合でも、防火地域では耐火建築物、もしくは「準耐火建築物」の設計が求められます。

防火の高い性能が求められる「耐火建築物」

では、耐火建築物とはどういうものでしょうか。耐火建築物は防炎や避難の観点から、壁・柱・梁・屋根・階段など、主要な構造の耐火構造や性能が技術的な基準に適合しているものを指します。

耐火建築物は、「建物が倒壊しないうちに安全に屋外へと避難できるかどうか」の観点から、主要構造部が耐火構造としての基準を満たしていることが要求されます。耐火構造の基準を満たしていない建物の場合、火災が起こった際に建物が倒壊してしまい、安全に避難できないことが予想されるためです。

屋内から火災が発生したケースはもちろん、周囲で火災が発生して延焼することも考えられるでしょう。そういったケースでも鎮火までの間、耐えられるだけの性能を持っているかどうかが焦点です。

また、外壁の開口部において延焼の可能性がある部分には、防火戸など政令で指定された防火設備を設けていることも耐火建築物の条件となります。

耐火性能・防火設備を設けた「準耐火建築物」

耐火建築物以外の建物で、主要な構造部を準耐火構造としたものが「準耐火建築物」です。また、準耐火構造と同等の耐火性能を持ち、主要構造部の防火措置など技術的な基準を満たした建物も準耐火建築物に含まれます。
準耐火建築物では耐火建築物同様、窓やドアのような外壁の開口部においては、政令で指定された防火設備を設ける必要があります。

防火地域に木造の家を建てられる?

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「防火地域では木造の家づくりは許可されないのでは」と疑問を持つ人もいるのではないでしょうか。防火地域では原則として耐火建築物しか建てることができず、以前は木造の家を建てることは難しいとされていました。
しかし、平成5年の「準耐火建築物」の認定以降、防火地域でも条件を満たせば木造住宅の建築が可能となっています。

また、国土交通大臣の認定によって、木造での耐火建築物の建築が可能となりました。それにより防火地域でも、100㎡以上の建物や3階建ての住宅も建築ができるようになったのです。

木造の耐火構造による耐火建築物とは?

防火地域に木造住宅を建てる場合、主要構造部以外でも耐火材でのコーティングが必要な部分があります。

例えば、屋根や階段などは30分の耐火構造が求められます。また、外壁の耐力壁や間仕切壁の耐力壁、最下階以外の床は1時間の耐火構造が求められます。そのほかにも、バルコニーの壁においては、外側面は外壁耐力壁の屋外側耐火被覆を準用したり、軒裏では外壁耐力壁の屋外側耐火被覆を準用したりといった条件が設けられています。

鉄骨よりも木のほうが火に強い?

鉄骨造のほうが木造よりも火に強いイメージを持っている人も多いかもしれませんが、実は木のほうが鉄よりも火に強い建物建材といわれています。

木はその性質上、火がついた際に中心までなかなか燃え進まないとされており、木材が燃えるスピードは、1分間にたった0.6mm程度ともいわれています。その結果、火災が発生した10分後の木材の強度は8割を保っているケースもあるのです。
一方、鉄の強度は2割程度まで落ち込むともいわれていることから、木のほうが鉄よりも火に強いという見方がされます。

防火地域で家を建てるときの注意点

防火地域で家を建てる場合は、構造的な建築制限や条件を受けるだけではありません。燃えにくい外壁材や防火シャッターの使用が求められたり、網入りのガラスなどの使用が求められたりと、建築コストがアップするケースがあります。

構造的な建築の制限を受けると、マイホームづくりに影響することもあるでしょう。また、イメージどおりに家を建てられるとしても、必要な性能上、建築コストがアップしてしまい、あらかじめ検討していた予算を上回ってしまうことも考えられます。耐火に優れた家は魅力的ですが、コストはできるだけ抑えたいものですよね。

家族のライフスタイルから、希望のエリアに住むことは重要なポイントですが、防火地域ならではの制限によって家づくりに影響が出てしまっては本末転倒です。建築制限や予算のことも考えながら、納得のいく土地でのマイホームづくりをおすすめします。

土地探しの際の防火地域の調べ方

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土地を探す際には、希望の土地が防火地域かどうか調べておかなければなりません。そんなときは、各自治体の都市計画図から、その土地が防火地域として指定されているかどうかチェックすることができます。インターネットで自治体名の都市計画図の検索が可能なので、気になる人は事前にチェックしておきましょう。

建築制限や予算のことを考えておくことが重要

防火地域は建築制限や条件が設けられているため、思うように家づくりができないケースもあるでしょう。もちろん、建築制限を遵守したうえでも理想のマイホームを建てることはできますが、検討している土地が防火地域に指定されている場合は、建築制限や予算上、どういった影響を受けるのかを調べておく必要があります。理想的な家づくりを実現するためにも、事前に防火地域をチェックしながら土地探しを進めることをおすすめします。


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