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憧れの注文住宅!購入時は複雑な資金の流れに注意しよう

掲載用1705-2B_33000000114.jpgせっかくマイホームを購入するならば、注文住宅で間取りや材質にこだわりたい、という人も多いでしょう。注文住宅は魅力的ですが、建売住宅や分譲マンションと比較して、資金の流れがやや複雑になります。資金繰りに困らないためにも、事前にしっかり計画を立てておきたいですね。ここでは、注文住宅で注意したいお金の話について詳しくお伝えします。

注文住宅を建てるまでの流れ

注文住宅を建てる際、「既に土地がある」という人もいます。しかし、土地があるのは親の土地を生前贈与された場合や、二世帯住宅を建てる場合など、一定のケースに限られます。そういった事情がない場合は、新たに土地を購入し、次いで建築という順序で住宅建築を行います。

一方、分譲マンションや建て売りの場合、基本的には家が完成した状態で購入するため、売買契約や住宅ローン契約を同時に行います。注文住宅を建てるまでの流れと比較すると大きな違いですね。

また、注文住宅の場合、土地を購入してから建設を行うため、分譲マンションや建売住宅と比べて住宅購入に時間がかかってしまいます。意外と知られていないのですが、住宅ローンの借り入れは家が完成した状態でないと融資が受けられません。住宅ローンの利用を検討している方は、この点で注意が必要です。では、住宅の完成以前に、どんなタイミングで資金が必要になるのでしょうか。一般的な流れを見てみましょう。

注文住宅における資金の流れ

  1. 土地の売買契約:土地の手付金を支払う
  2. 土地の決済・引き渡し:土地代の残金を清算
  3. 設計:設計料やデザイン料の一部を支払う
  4. 住宅建設開始:工事の着工には着手金が発生
  5. 中間金:中間金は、建築業者により回数が異なるが、通常1、2回
  6. 住宅完成・引き渡し・住宅ローン融資:デザイン料や設計費、建設費の残金を清算

設計を請け負う設計士や、建設業者により支払時期や金額に若干の違いはありますが、住宅ローンの融資を受ける前に土地代や前金、中間金など多くの費用が掛かることは共通です。そのため、資金繰りを住宅ローンだけに頼ると、思わぬ事態になってしまうかもしれません。

住宅完成時でないと住宅ローン融資が受けられない理由

住宅ローンはなぜ、住宅完成時でないと融資が受けられないのでしょうか。理由は、住宅ローンは借金であり、債権者にとっては確実に返してもらう必要があるからです。

もちろん、お金を借りたらきちんと返済しようとするのは当然ですね。しかし、会社の倒産や病気など、想定外のことが起こって返済できなくなる可能性もあります。金融機関は、そんなときのために住宅に抵当権を設定します。抵当権とは簡単にいうと「債務者がお金を返してくれないとき、債権者が家を売って、その売却代金を返済に充てる権利」というものです。怖い制度にも思えますが、家を売ることで借金がなくなる(もしくは減る)のならば、借りる側にとってもメリットがあるといえそうです。

この抵当権は完成していない住宅に設定することができないため、住宅が完成していないと住宅ローンによる融資が受けられない、つまりお金を借りることができないのです。

住宅の自己資金が不足する場合

「もしかしたら、土地代やデザイン料を住宅ローンに含めて借りられるのかな?」と疑問を持つ人もいるかもしれませんが、それは問題ありません。それらの費用も住宅ローンとして借り入れすることが可能です。注意すべきは、住宅ローン借り入れ前に発生する支払いをどうするかという点です。自己資金が豊富ならば、預貯金を切り崩して支払いに充てれば問題ありません。では、そうでない場合はどういった方法があるでしょうか?

つなぎ融資を受ける

自己資金が不足する場合や、自己資金がないわけではないが手をつけたくない場合は、抵当権が不要でお金を借りられる「つなぎ融資」を受けるという方法があります。つなぎ融資とは、住宅完成前に、住宅完成を見込んで先行融資を受けられるローンです。とはいえ、2本のローンを組むのではなく、先行借り入れ分は住宅ローン契約時に清算し、最終的には1本の住宅ローンを返済することになります。

ただし、つなぎ融資は無担保ローンのため金利が高い傾向にあります。住宅ローン借り入れ時に清算し、金利の低い住宅ローンと一本化するのが合理的、かつ一般的です。

つなぎ融資の注意点

金利が高めとはいえ、必要なときに融資が受けられ、かつ借入期間も短く抑えることができる「つなぎ融資」は注文住宅の強い味方です。ただし事務手数料が高めに設定されていることもあるので、詳細をしっかり確認してから利用しましょう。また、つなぎ融資の取り扱いがない金融機関もあるため、土地探しの段階から金融機関探しも並行して行いたいところです。

なお、いくら無担保融資とはいえ、住宅ローンが前提のローンであることは変わりません。そのため、融資の前におおまかな設計プランを求められることもあります。つなぎ融資契約の時期は、早い人なら土地を購入するときです。その段階での設計プランの立案は難しいかもしれませんが、設計士さんの協力を得て融資を受けましょう。

住宅購入における、そのほかの諸経費

注文住宅の場合における資金繰りは注意を要することが分かりました。しかし、住宅購入時はそのほかにも以下のような諸費用が発生します。

  • 住宅ローンの諸費用(印紙税、保証会社事務取扱手数料、抵当権設定登記に伴う費用など)
  • 税金・登記費用や火災・地震保険料
  • 家具購入費・引っ越し代金など

土地代や工事着手金と違い、これらの費用は住宅ローンに含めることはできません。別枠で用意しておくことが必要です。資金に余裕がない場合は諸経費用のローンもありますが、借入額が物件価格を超えるような借り入れは返済の負担が大きいのであまりおすすめできません。諸経費は物件価格の3~6%程度とされています。事前に用意しておくのが望ましいです。

注文住宅の費用は高め?

住宅金融支援機構の2015年度の「フラット35利用者調査」によると、注文住宅は、同じ一戸建てである建売住宅よりも費用が高めになっています。注文住宅は建売住宅よりも床面積が広い傾向にあることや、建売住宅の場合、複数の棟を一括して建築するため土地代や材料費の効率が良いことなどが原因と考えられます。また、注文住宅はデザインや素材にこだわる傾向があり、つい価格が上がってしまうケースも多いようです。

注文住宅の醍醐味でもある「家へのこだわり」ですが、住宅ローンの負担が重くなりすぎないよう総合価格には注意しなければなりません。住宅価格の上限を最初に決定し、それを超えないように強い意志を持って行いたいですね。

税金や適用金利にも注意

忘れがちなのが、土地にかかる税金です。土地購入後、建築中から土地の固定資産税や、不動産取得税が発生します。税金支払いのタイミングは購入後少したってからのため、住宅建設の資金繰りの真っ最中に支払わなければならなくなる、という可能性もあります。

また、住宅ローンの金利は申し込み時点ではなく、「融資実行時」の金利が適用されます。つなぎ融資のころに比べ、住宅ローンの金利が上昇するおそれもあります。当初から、少し高めの金利で見積もっておくと安心です。

資金繰りの計画を立てよう

「注文住宅って大変!」と感じた人も多いと思います。しかし、間取りやデザインを自由に選べるのは大きな魅力です。以前よりもつなぎ融資の種類は豊富になりましたし、使い勝手も良いものが登場してきています。ポイントは、最初に手持ち資金と必要な現金をしっかり把握しておくこと。そして、不足部分は上手につなぎ融資を利用しましょう。

いくつかの注意点を知っておけば、資金繰りに行き詰まることも少ないはずです。家づくりは人生の一大イベント。大変さも、楽しんで行いたいですね。道のりは困難だったとしても、振り返れば家族にとって良い思い出になるのではないでしょうか。

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