支払った税金が戻ってくる?住宅ローン控除のしくみ
家を購入する際、多くの方が住宅ローンを利用されると思いますが、いきなり大きな額のローンを組むことに不安を感じる方も多いのではないでしょうか。そんな不安を軽減するために住宅ローン控除という経済的な負担を緩和するしくみがあります。
今回はその住宅ローン控除の解説として、「そもそも住宅ローン控除とはどういった制度なのか」、「住宅ローン控除を受けるためにはどんな要件があるのか」、「控除額の計算方法」についてお伝えしていきます。
住宅ローン控除とは
住宅ローン控除は住宅ローン減税とも呼ばれますが、住宅ローンを利用して家を購入、新築・増改築した場合に、一定の要件を満たせば入居した年から最大13年間にわたって、住宅ローンの年末残高の一定割合が所得税・住民税から控除される制度です。
サラリーマン世帯の場合は"控除"というとイメージが湧きづらいかもしれませんが、支払った所得税が年末調整で還付されるしくみで、所得税から控除しきれなかった分については住民税から控除されるようになっています。
また、住宅ローン控除は2021年に終了予定でしたが、2025年12月末まで4年間延長されることになりました。
住宅ローン控除を受けるための主な要件
住宅ローン控除を受けるためには、いくつかの要件があります。主だった要件を項目ごとに分けてご紹介します 。
1.人に対する主な要件
・住宅を取得した日から6ヶ月以内に入居し、12月31日まで引き続き入居していること
・控除を受ける年の合計所得金額が2000万円以下 など
2.住宅ローンに対する主な要件
・住宅ローンの借入期間が10年以上
・住宅の取得のために借りたローンであること など
3.家に対する主な要件
・住宅の床面積が50㎡以上
・床面積の1/2以上が自らの居住の為の空間であること など
4.省エネルギー性への要件
2024年以降に建築確認を受ける新築住宅などで、一定の省エネ基準適合を満たさない場合は、住宅ローン控除の対象外となります。一定の省エネ基準を満たす住宅として、以下の4つが挙げられます。
・長期優良住宅
・低炭素住宅
・ZEH水準省エネ住宅
・省エネ基準適合住宅
それぞれどういった住宅なのか簡単にご説明します。
〇長期優良住宅
長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅のことをいいます。劣化対策や耐震性、省エネルギー性、バリアフリー性などの認定基準があり、それらを満たすことで長期優良住宅として認められます。
〇低炭素住宅
低炭素住宅は、二酸化炭素(CO₂)の排出を減らす工夫がされた建築物のことをいいます。二酸化炭素(CO₂)を減らすための機能や設備を備えている必要があります。
〇ZEH水準省エネ住宅
ZEHとは ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略語で、生活で消費するエネルギーよりも生み出すエネルギーが上回る住宅を指します。規定以上の消費エネルギー削減量や太陽光発電などエネルギーを生み出す設備などが必要になります。
〇省エネ基準適合住宅
省エネ法で定められた省エネ基準を満たした住宅のことを指します。断熱性能やエネルギー消費量に基準があり、それを満たすことで認められます。
住宅ローン控除の概要
住宅ローン控除の控除率は一律0.7%ですが、前述した住宅の種類や入居年によって控除期間や控除額が変わります。住宅の種類や入居年による内容の変化を以下の表にまとめました。
※1 年末の借入残高がこの額を超えた部分は控除されない
※2 2023年までに新築の建築確認の場合2000万円、控除期間10年
控除期間を見ると『新築住宅・買取再販』のほとんどは控除期間が13年なのに対し、『既存住宅』は10年と短くなっています。
年間最大控除額は『新築住宅・買取再販』の「長期優良住宅・低炭素住宅」が35万円と最も高く、『既存住宅 』の「その他の住宅」が14万円と最も低くなっています。控除額の差は年間で21万円、合計では最大315万円ということになります。
具体的な控除額計算の例
住宅ローン控除の年間限度額は、以下の式で求めることができます。
年末時点の住宅ローン残高×0.7%
例えば2023年に、長期優良住宅に居住したケースを見てみましょう。前述の計算式に当てはまると、5,000万円×0.7%=35万円となり、35万円が年間の控除限度額ということが分かります。控除期間は13年となりますので、年35万円×13年=455万円が控除額の最大合計値となります。
実際には通常ローン残高が毎年減っていくため、控除額も年々変化してい きます。仮に上記の例で年末時点の住宅ローン残高が4,700万円だったとすると、4,700万円×0.7%=32.9万円が年間の控除限度額となります。
住宅ローン控除の注意点
冒頭でもご説明した通り、住宅ローン控除は支払った所得税が年末調整で還付されるしくみです。当然ながら、支払う所得税額が住宅ローン控除可能額より少ない場合は、控除可能額すべてを利用することはできない、ということになります。
所得税額から控除しきれなかった部分は翌年の住民税から控除されますが、住民税の控除額にも上限があり、最高9.75万円と決まっています。(その年分の課税総所得金額等の5%)所得税や住民税の上限を超える控除は、受けることができないことに注意してください。
また、住宅ローン控除を受ける1年目だけは、確定申告が必要です。自動で手続きされるわけではありませんので、こちらにも注意が必要です。住宅ローン減税の適用により所得税の還付となる申告については入居の翌年1月1日から提出が可能です。
いかがでしたでしょうか。今回は住宅ローン控除の解説として、「住宅ローン控除とは」、「住宅ローン控除の要件」、「控除額の計算方法」についてお伝えしていきました。
最大13年間トータルで得られる減税額は、無視できない大きな収入になります。特に購入する住宅の種類によって大きく変化しますので、住宅の購入計画を立てる際は、その点もしっかり考慮するようにしましょう。
※2023年1月6日時点の情報です。