家族を育てる家

はじめての家づくり

設計士が薦める不動産チラシで間取り図遊び

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チラシの間取り図で遊ぶ

家づくりを考え始めた時に皆さんは何を参考にされますか?ここでお薦めするのは、郵便ポストに入ってくる不動産チラシで間取りを考えてみるという事です。
私は住宅の図面を描く仕事をしています。帰宅して郵便ポストを見ると、不動産チラシの入っている時があります。私はこのチラシで小一時間遊ぶことができます。周りから見れば、楽しそうには見えないと思いますが、私の頭の中では小さな物語が幾通りも繰り広げられています。
もし興味がありましたら、どのような遊びなのかお教えいたします。

不動産チラシの遊び方

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まずはチラシ間取り図の歩き方です。間取り図から実際の住宅を想像するのではなく、ドールハウスのおうちでお人形遊びをするような感覚です。間取り図をドールハウスのように捉えて、自分がお人形サイズに小さくなります。自分人形の大きさは、お風呂のバスタブくらいが寝転がった人形サイズだと想像すると、大きさ・広さの感覚がつかめます。

間取り図の上を歩く時は、自分人形の立場(年齢・家族構成)を設定してから空想を始めます。そうすると話が進み、具体的になり楽しいです。小さい頃に遊んだおままごとのような感覚です。ひとつの間取り図でも、人形の立場を変えて視点を変えれば、何通りでも楽しむ事ができます。

人形その①_小さな子供のいる共働きママ

ママ人形が間取りを歩きます。
「玄関を入ってベビーカーは...ここに置けるね。土間が広いと便利だね。」「間取りで一番大切なのは、楽に家事ができること!キッチンから洗面所、お風呂が直接行けるのは効率が良いね。」リビングの床やソファーに置いてしまいがちな保育園バッグや夫の通勤バッグ。毎日使うし、手帳など何度も見る機会があるものを自室に収納するのは効率が悪い。
「リビングに毎日使うバッグを収納できる定位置があると便利だな。」キッチンから子供の姿が見られることも重要ポイント。見ることができない間取りだと、何度もキッチンから顔を出して子供の安全を確かめなければならない。
「対面キッチンはやっぱり良いね。子供も私に見られて嬉しそう。いつまで喜んでくれるのかな...」

人形その②_思春期の子供を持つ母親

先ほどの人形の10数年後の立場で空想します。
子供部屋にいる時間がすっかり長くなった我が子。それでも、お茶をしたくなればリビングにやってきます。きっとそれは、子供部屋が狭いからなのでしょう。ベッドと勉強机しか置けない広さですからね。リビングでおやつを食べる子供をキッチンから眺めます。「この時間が大事。」

子供部屋から玄関に出るにも、リビングを必ず通る間取りになっています。私がキッチンにいなくても、リビングやリビングに接する和室に夫がいれば、自然と気がつき声を掛けることができます。「この状況が大事。」

人形その③_子供が巣立った後の主婦

高齢になった自分人形が間取りを歩きます。
玄関土間には夫の趣味の登山グッズが増えてきました。私はキッチンとリビングでほぼ一日を過ごすようになりました。私も何か趣味を見つけて時間を使いたいところです。
趣味が料理ならキッチンにいる時間が長くなります。「キッチンがリビングと一体だから閉塞感がなくて良いね。」もし趣味が洋裁になったら、布や糸や道具などのスペースが必要になります。「リビングでは難しいだろうな。和室にごちゃごちゃ物を置くのは良くないよね。子供部屋だったところを趣味の部屋にしようか。」

夫も私も高齢になりました。「もっと歳をとったら、リビングに接してある和室で寝起きすることもできるね。」

人形その④_幼稚園児

幼稚園児の自分人形が間取りを歩きます。
家にいる時は、ほとんどリビングにいるよ。「リビングは明るくて安心するね。」
夜はママと一緒にリビングに接した和室で眠るよ。「ママが来るまでは1人だけど、リビングとの境の引き戸を少し開けてもらっているから大丈夫。照明が少し入ってきて、テレビの音や家族の声が聞こえるから安心して眠れるね。」

人形その⑤_小学生

小学生の自分人形が間取りを歩きます。
近所で遊んで帰って来たよ。家の中に入る前に庭に回ってママがどこにいるのか見てみよう。「テレビはついているけどリビングにはいないね。キッチンに...いた!」
玄関から入りすぐキッチンへ行きたいところだけど、玄関ホールにある手洗いで手を洗ってうがいするよ。そうしているとママが気づいて来て、ほめてくれた。誇らしい気分。

ランドセルはリビングの収納に置くよ。宿題もリビングでするね。ママはキッチンにいるけど、こっちをチラチラ見てくれているから宿題がんばるよ。

人形その⑥_高校生

高校生の自分人形が間取りを歩きます。
朝、洗面所が混むのが嫌ですね。「歯磨きは玄関ホールの手洗いで済ませてしまおう。」
起床してリビングに行くと、とっても明るいです。「和室の窓もあるからかな。やっと目が覚めた。」

廊下にある家族みんなで使っている作り付けの本棚。その上の方には父親が読んでいる歴史の本があります。「小さいころは全く興味が沸かなかったけど、この前読んでみたら意外と面白かったな。」その話を父親にしたら、驚くほど喜んでいました。
宿題は自分の部屋で集中したほうがはかどります。音楽を聴きながらのほうが集中できたりします。でも、くつろぐには狭いし、のびのびするのはリビングのほうが良いですね。リビングは広くて明るいので。「勉強の休憩は、お菓子とお茶をしにリビングに行こう。おやつ何があるかな。」

人形その⑦_ 1人暮らし中の社会人

スーツケースを玄関隣のシューズクロークにとりあえず置いて、中に入ります。「土間が広いと便利だな。1人暮らしの玄関は狭くて、玄関に置きたい物もリビングに置かないといけない。やっぱり物には適切な置き場所があるよね。実家は良いな。」
久しぶりに入る自分の部屋。「やはり狭いね。でも、こうして家を出て行くのだし、これが効率よかったのだろうな。」

一方のリビング。「キッチンや和室と繋がっているから広く感じて居心地が良いな。」リビング横の和室でゴロゴロしていたら、母が習い事で練習しているストレッチをはじめました。「畳はお昼寝したり、洗濯物をたたんだり、ストレッチに使ったり。便利なんだね。」

チラシの間取り図遊びで見えてくるもの

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お人形遊びのような、おままごとのような遊びが、チラシひとつでできました。場所もスペースも不要な遊びです。今回は7つの女性人形で空想しましたが、男性人形で話を進めても新たな発見があって楽しめると思います。
また、いろいろな間取り図で上記の遊びをすると、その間取り図の良かった部分や、困った部分が出てきます。その気がついた箇所が、より自分の生活スタイルにあった間取りを見つける大事なポイントになると思います。家を建てるために間取りを具体的に考えようと思っても難しく感じる場合は、このチラシ間取り図遊びをすると、イメージが膨らむかもしれません。

是非、皆さんも家づくりの参考にしてみてください。